笑い声(2023.5.7)

文字数 540文字

 楽しいから笑う。嬉しいから笑う。
 なのに、笑い声にも好き嫌いがある。悪意はないのだろうが、どうにも虫唾が走るのは、頭のてっぺんが痛くなるような甲高い笑い声だ。要はウルさくて、気分が害される。楽しい話がすべてかき消されて、笑い声が主役になってしまうのだから、質が悪い。
 酔うほどに甲高くなる輩とは二度と飲みたくないと思う。本人は、笑い過ぎて腹筋が痛いとか声が枯れたとか大笑いしながら、居酒屋を後にした電車内でも他の乗客に迷惑を掛け続ける。ほんと、勘弁して欲しい。僕は関係者だと思われたくないから、距離を置く。
 やはり、邪魔にならない、更に話したくなるような笑い声がいい。主役ではなく、脇役であるべきだ。多くは心得ているから、話す番が来たら持ちつ持たれつ、笑い声で場を盛り上げるのだ。決して難しいことではない。
 僕は笑い声に人柄が出ると思っている。嫌いな笑い声に巻き込まれた日は、ほとんど笑えなくなる。ニコリともしない僕を見て、甲高い声はどうにか笑い声で笑わそうとする。そんな静かな戦いが最近増えた。いつの間にか、我が強くないと生きて行けない世の中になったのだ。
 甲高い笑い声より嫌いなのは、無声の笑い声だ。馬鹿にされているとしか思えない。どうして、普通に笑える人が減ったのだろう。
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