『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭(2024.9.7)

文字数 554文字

 オードリー若林の旅行記である。
 ただ、旅行を通じて彼自身が自身について考え、気づき、思い悩むところが読みどころなので、旅行記として読むとちと違うかもしれない。

 キューバ、モンゴル、アイスランド

 僕はどの国も行ったことがない。なので、文化の違いなどが面白かった。けれど、異文化に飛び込んだ若林は若林であり、若林が殻を脱ぎ捨てて劇的に変わる、というよりも「何か」を感じ、本来の「自分」を見つけたり、だんだんと表情や言動が変わるのだけれど、当たり前だが、根幹は若林は若林なのである。やはり、どこかナナメなんだよなぁ。何をグダグダと言っているのかと自分でも思うのだけれど、どうして若林がキューバ―を旅先に選んだのか、について書かれた件はなかなかグッとくるものがあった。海外に一人旅に出た時点で、若林は大きく変わったのかもしれない。根幹が変わったというよりも、太くなったと言う方が正しいような気もする。

 若林正恭の本を二冊続けて読んでみて、どこか親しみを感じる、というのが一番の感想だ。かっこいいことは一つも書かれていない。けれど、真面目に悩み、真面目に傷つき、真面目に生きようとする姿勢が信頼感を生むのだ。ここには嘘も誇張もない。たぶん。

 若林のエッセイを手にした読者は、若林を通じて自分を見つめているのだと思う。
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