映画「苦い涙」(2024.8.4)

文字数 540文字

 フランソワ・オゾン監督「苦い涙」。
 娘はいるけれど、同性愛者である主人公ピーターは映画監督である。失恋して生活が荒れていたところに現れた青年アミールに恋をする。気づけば、アミールに従順となり、彼の自由奔放さに振り回され、精神的不安定になっていく。何だか情けないオジサンなのだが、あまりの入れ込みように、こちらも不安になり、だんだんと笑えなくなる。ピーター、大丈夫か? と。
 そして、ついに……娘、母親、親友を傷つける暴言を吐き、大暴れして物を投げ壊す。ピーターは完全に壊れてしまったのだ。たった一人の青年の存在によって。

 ピーター・フォン・カントを演じたドゥニ・メノーシェ。
 
 彼の演技力にすっかりと飲み込まれてしまった。狂気なのだが、どこか憎めない。そして、なぜか微笑ましくなる台詞と体型、手振り素振り。ドゥニ・メノーシェの演技を観るだけでも相当な価値があると思う。素晴らしい。

 そして、秘書というか、召使というか、下僕のように扱われてきたカールが最後に見せる爆発が、物語を一気に現実に戻す。このエンディングはなかなか痛快である。

 また同性愛者の話か、と思ってしまうが、切り口がそれぞれ違っており。今回は恋に盲目となる男の心情をとことん描いている。悲劇と喜劇は紙一重だと思う。
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