二十一の一 座敷わらし対異端の魔道士
文字数 2,811文字
雷型の護符を見えない襟へと放りこむ。幼児ほどの大きさしかない座敷わらしが、おのれの力だけを頼りに、びしょ濡れの老人をにらむ。すべての根源の萎びて小柄な老人に向かう。
巨大な蜂が、蜂達を引き連れて上空で待機する。轟音とともに先走った雷が林に落ちる。対岸にも。
炎が河原を照らし豪雨に消えていく。
友を誰にも渡さない。
「お前は黙れ」露泥無に命じる。
巨大な蜂はなおも上空で指示を待つ。
小鳥ほどの蜂達は俺めがけて飛ぶ。
楊偉天が俺へと杖を向ける。
朱色の蛇が無数に落ちてくる。分裂しながら俺に牙を向ける。
(冷静になれ。この老人を倒しても無駄だ。陽炎のビルと同じく、また別の楊偉天が現れるだけだ。あの鏡が生みだす、神殺の楊偉天が笑うだけだ。……本物がいるはず。臆病な老人は近くで鏡を持ち、龍の登場に怯えているはずだ)
俺は木霊に命ずる。すべての異形に命ずる。
……林がざわざわとうごめく。
不快ですまない声から、暴れる沢の上まで逃げる。
奔流へと透明な膜が落ちる。跳ねかえしの結界が、竜巻のように沢の水を吹きあげる。
巨大な蜂が暴れだす。まき散らす毒を浴びたオニスズメバチが溶けていく。
次回「雷雨さえも平伏する」