二十四の一 アポなし異形あり里帰り
文字数 2,112文字
(張麗豪が渡すのを渋ったふるびた書物のことだ。どうせ不安を駆りたてるだけだから詳細は聞かない。
玄関のチャイムを鳴らして、ドアノブをまわす。鍵がかかっている。下宿の鍵はあるけど、自宅のまで持ち歩かない)
(麦茶をポットから三人分入れて居間へと運ぶ。女の子を連れて帰省したスタンスになっている。露泥無である女の子は、ちょっと華奢だが容姿が劣っているわけではない。
親の留守におそらく昨夜から女を連れこんだことを説教する立場ではない。長居はしない予定だし)
壮信が本箱の上を指さす。
(お天狗さんの金札がふたつ立てかけてあった。はたき程の長さの木の棒に、A3を三つ折りしたぐらいの紙札が貼られている。あいかわらずシンプルで意味なくでかい……。
俺の代わりに買ってこい。金はつぎに会ったときに渡すからと、大晦日か正月に酔っぱらってこいつに頼んでいた)
次回「温故知新なお付き合い」