五十二の一 六人の魂が詰まっていた
文字数 3,187文字
(思春期のような思玲が言う。
彼女がおとなになれたのは箱が壊れたからか? だとしたら、とてつもない天祐だ。導きだ。
彼女が以前より十歳ぐらい若いのは、箱が完全に壊れてないからかも。だとしたら、まだ男子三人が人に戻れる可能性はある)
火焔嶽を振りかざす。思玲が向きあう。両手には天宮の護符と七葉扇があった。亮相の構えから交差させる。
夕焼けの校舎で峻計が言っていた。
俺は首を横に振る。もっといい方法があるのでは――
(横根の結界は消えていた。思玲が狼を足蹴にして起こすのを、夏奈が目を見ひろげる。
そもそも川田は光を分断して人に戻れるのか? 本物の異形ならば消滅しかねない。でもドーンはあと半日で本当の異形になってしまう。思玲と川田を信じないと)
川田が思玲に牙を向ける。
川田が横たわり首を差しだす。そこはダメだ。
(横根だけは、こっちの世界を覚えたままだよな。万事うまく進んだら、記憶消しの妖術をドロシーに頼むべきだ。一月ほど本当の記憶が消えても仕方ない。
……夏奈は中学生の横根にも違和を持たずに接している。男どももあっちの世界に帰ったら、昔の横根の姿を忘れるのだろう)
護布は? 俺はドロシーを見る。
次回「明け方前の五人」