四十五 三十七時間後
文字数 1,950文字
呼びかけられて、俺ははっと目を覚ます。
(独り言を言っている……。
コンクリートの上で大の字になっていた俺は起きあがる。服はほとんど汚れていない。
コンクリートの上で大の字になっていた俺は起きあがる。服はほとんど汚れていない。
……きっと、ドーンと飲んで、下戸のドーンのぶんまで酔っぱらって、こんなところに入りこんだのか。きっとそうだ。情けない)
こいつは黒色の子犬を抱えていた。近くで見ても知らない顔だ。俺より背が低くて長髪で、アイドル系の顔立ちだ。
その片側の目は潰れていた。
はあ……
(どう受け答えしていいか窮してしまう。これは演劇部の朝練かな? そういえば俺は演劇部だっけ? いや、違う。4‐tuneっていうテニスサークルのメンバーだ。
俺はなんだか疲れているな。疲れすぎて頭がはっきりしない)
俺はようやく声を発する(敬語だけど)。こいつはさわやかに笑いかえす。
見知らぬ男は剣を肩に乗せて階段から消える……。
ポケットにまぎれこんだ焦げた木の端くれを捨てながら、まず一台をだしてみる。
冷気や衝撃も感じて、おもわず放り投げる。
その脇で捨てた木っ端が粉々になる。風に吹かれたように消えていく。
人の声がしてびっくりする。散乱した瓦礫の中で、ドーンが赤い布をかけて座りこんでいた。
なぜだか首が重くなる。あらためて時間を確認すると、日曜(?)の朝五時だった。どれだけ発散したのか知らないけど、疲労の限界だ。
俺は呑気に眠る子犬を抱きあげる。夏休みだろうがバイトと勉強が生活の主軸だ。それと女の子。
さっきの奴が言うように、みんな忘れよう。幸運にも今日のシフトは遅番だ。
俺は友人の口ぐせを真似て、笑いながら手を差しだす。
次回……