四十二の二 この身が削がれようと
文字数 1,870文字
俺も楊偉天をにらむ。
楊偉天が杖をおろす。
血の色の光がうねりだし、俺を襲う。
護符がたやすくはじき返す。
俺は手にするもの全てをTシャツに押しこむ。……護布に包まれたドーンと心がつながらない。この緋色のサテンはすべてを妨げそうだ。
(桜井の感情にあふれた声……。カフェテラスでの寝ぼけ眼からの満面の笑み。俺だと気づいたぎこちない笑み。
ロタマモのせいで思いだしてしまう。俺の嫉妬心。藤川匠……。
師傅が現れる直前の駐車場で、フクロウは峻計も俺も笑っていたな。
あれは惑わしだ)
師傅を追い越し、階段を駆けあがる。
師傅が月神の剣をおろす。剣もはじき返される。
師傅が俺を見る。小さくうなずくしかない。
楊偉天がさめた目で見る。
俺は結界をなぐろうとして、師傅に押しとめられる。
次回「スタンドバイミー」