十一の二 大空あおげるかよ。ラジオなんかねーし。風よどんでるし
文字数 1,952文字
ヒマワリの上にぽつんと乗る俺に、思玲が声をかけてきた。休むとか言ったくせに、俺達の様子を見にきている。
思玲がヒマワリの葉に顔をよせる。中庭は真っ暗なのに、彼女はすべて見えるようだ。
思玲が人の言葉を口にする。このフレーズなら習っている。関係ないってことか。
東京の夏の夜は、妖怪の目でも星はかすかだ。彼女へすべき質問も今さら意味ない。でも思玲は問いかけてくる。
思玲はヒマワリの茎をつつきながら言う。俺は小さく揺れる。
懐に手を入れる動作をする。
彼女はひとしきり喋って去っていく。俺は花の上に乗るだけだ。
俺はふわりとヒマワリから離れる。カラスを探しに校庭へと向かう。中庭のさきで闇が弱まる。朝など来なくていいのに。
スズメが鳴きだした。朝の挨拶だ。動物の声が聞こえる俺には分かる。
校庭は明るくなっていく。反対側にバックネットが浮かびあがる。俺達だけ朝から取り残されるなら、ずっと闇にとどまりたい。
ドーンが大きなくちばしを向ける。流範とやりあったせいで、それに嫌悪を感じる自分が悔しい。
夏奈ちゃんはここに来る前に自宅に帰った……て言うか、千葉市と言っても近所がピーナッツ畑って言ってたよな? 飛ぶの速すぎね?
……窓から覗けば、自分の部屋もそのまま存在したらしい。でも庭にいた祖父に声をかけても、自分だと気づいてもらえなかったって。まとわりついたら殺虫剤をかけられたって
一直線に降りてきた。俺はあわてて懐に手を入れる。護符を握りしめる……。
お天狗さんの木札は待ち兼ねていた。
次回「ボソとブトと俺?」