六の一 各駅停車の旅
文字数 1,693文字
1.5-tune
湯水のように使われたお金の心配をしながら、吠えつづける子犬(手負いの獣だ)をなだめ、すれ違う人に威嚇しまくる白人女性(白虎もどき)をなだめる。
駅前でカラス(朱雀くずれ)をキャリーバッグ(遺失物として受けとった)にしまう女の子(魔道士)への周囲の目にはらはらさせられる。乗り換えて、ようやく故郷へと続く各駅停車に乗る。
(なのに途中駅で鉄道警察が二人乗り込んでくる。一直線に彼女達の四人座りのシートにやってきた。
JRの駅でリクトが脱走しかけたのと、フサフサが駅員の胸ぐらを持ちあげたのが原因に決まっている。
俺は動く電車の窓から逃げだそうとするフサフサをなだめ、スーリンの横に浮かんで対応をアドバイスする)
(こんな愛らしい子ににこやかに直視されたら、最終的には警察も笑みを返して去るだけだ。不必要ににらみをきかす大柄の白人女性が真横にいても。
しかしスーリンの声は、人の言葉でもこっちの世界にスムーズに伝わる)
このやり取りには肝を冷やしたけど、電車は俺の故郷へと着実にすすむ。
俺はやはり人の目に見えず、ここまで騒ぎすぎた子犬は段ボールですやすやと寝て、キャリーケース(こっちを選んだ)からドーンのぼやきがうるさいぐらいだ。
(人の目に見える残りの二人はかなり目立つ組み合わせだ。でも地元の爺ちゃんやおばちゃんが好奇心で声をかけようが、露骨に無視されるか歯をむきだされるだけだった。
俺達はかまわずにいてもらえたら、それぞれが心の声を交わすだけの静かな一団だ)
次回「失われた記憶の整理」