十二の二 独唱は続く
文字数 2,111文字
『カウントダウンは49秒』
『47,46…』
アンディがシノを抱きながら、なにかをくわえる。
『犬笛を吹こうが、蒼き狼はあさましき連中を追ってはるかな山だよ。――大鴉に目を奪われたアンディ、本来の名は李秀静 。湖北省に生まれる。五つの年からうとまれ怯え、魔道団に拾われた青年』
『生い立ちの弱さを隠すためにふらついた男を気どり、人に隠れ同期の
『ドロシー、はやく言えよ。
早めちゃうぜ。7,6…』
おぞましきさえずりがまた聞こえた――。
『シノよ。母が授けし英名はハンナ。東洋の名は河若煕。お前に悲嘆している時間はないぞ』
『人の世にふさわしからぬ力のために、カトリックの教会から見放され、親に放逐され、魔道団に転がりこんだ憐れな娘。だが親の気持ちは分かるぞ。忌まわしき資質を抑えられぬ娘などな。
サキトガよ、この娘の人生はあと何秒だ?』
『……俺は数字にこだわるんだけどな。とりあえず元彼と同じお目めにしてやるか。
梓群ちゃん、じきにカウントダウンが始まるよ』
虚脱した彼女の目から、血の涙がとめどなく流れていた。
『お前もこちらのものだったのか……。頼まれたのならば仕方ない。異形すべての耳に届く声色を授けよう』
『ホホホ、哲人君も消えてしまうが、これは想定外かつ偶発的な事故によるものだ』
♪♪♪……
次回「大姐の二胡」