四十六の二 チラシの裏から0.5-tune
文字数 3,140文字
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スーリンが天井を見つめる。
取り立ては若手のエリートどもだろうな。シノやアンディあたりか……。
ふん。ケビンが来なくても今の私は無抵抗だ。またお茶会に呼ばれてヤムチャだ。
……担保の話がでないな。だとすると剣を奪ったのは魔道団ではないのか
……。
(この子と二人きりになるとさらに頭が痛くなる。俺は眉間を押さえながら、カップ麺やコンビニ弁当の食卓と化したデスクに転がる鍵を、ポケットにしまう。テーブルに汁が飛んだままだ。ここもきれいにしないと)
眠っている子犬の頭を軽くなでながら言う。
俺は部屋からでる。八月初旬の太陽は朝から痛烈で、苦笑いを浮かべてしまう。
振り返るとスーリンはちょこんと座っていた。
女の子に笑いかけて、俺は一人で大学へと向かう。バイト先には、お勉強会が長引けば遅れますと連絡済だ。夏休み中だけ高校生のバイトが来るから(オーナーの姪とその友達だ。俺が寝こむ二日ほど前から急きょ店を助けることになった)、すこしは気が楽だ。
夕方、管理事務所には誰もいない。ビニールに包まれた臨時休業の張り紙が、さきほどの夕立のしずくを垂らす。番号を確認し、ロッカーに鍵を差しこむ。23番は待ちかねたように扉を開ける。押しこまれた大きめなバッグを引っぱりだす。
テニス場からすこし歩いて、まだ濡れたベンチを手で拭いて腰かける。
(おそらく女の子のカバンだ。中身を確認しないわけにもいかないから、まず財布を取りだす。現金とカードがあるぐらいだ。パスケースも確認する。
見ず知らずの女の子の私物を探ることに、すこしだけ興奮を覚えてしまう)
模様があるだけだった。よく見ると学生証なんかでないことに気づく。
他愛もないただのカードだ。
もう一度まじまじと見る。なんでこれが学生証に見えない。模様だって、チラ見したときは写真だと感じたはずだ……。あのカードと同じだ。あれだって読みとる機械以外は、俺も店員も
バッグをさらに探る。読み聞かせボランティアのプリントの裏に、走り書きが残されている。違った。単なる幼稚園児のいたずら書きだ。でも、そんなはずはない……。
俺は自分のレポート用紙に一文字一文字書き写す。頭が痛い。この一週間悩まされた頭痛だ。……頭痛のもとである、あの声が聞こえる。
例の夢物語か? 俺は読み続ける。頭が痛い。
途切れるように文章が終わり、あらたに始まる。
ブーン
ブーン
最後の3は、「る」か「ろ」だろう。この人(ドーンが言う瑞希ちゃんを当てはめてしまう)は、急いで書きおえたのかもしれない。この子になにがあったのかは知らない。ドーンとスーリンが関わっているらしいし、俺もみたいだ。
信じられるか、こんな雑記を。
パシッ
俺は頬にとまった蚊をおもいきりひっぱたく。信じられるか、できそこないのおとぎ話を?
あの声がまた聞こえる。なのに頭の痛みを受けいれかけているから。
気づけばあたりは暗闇だ。街灯に照らされて人けのない公園に一人いる。バイトなんかよりあのアパートに戻らないと。そして、
第一部完
次回 第二部『5-tuneⅡ 四神獣達のシフトアップ』
ぶっ続けで連日行かせてもらいます。