二十五の一 弱い二人が向かうのは
文字数 3,153文字
(桜井をGPS扱いだ。でも、たしかに今の俺ですら彼女がどこにいるか感じられる。桜井の緊張した気配が伝わる。俺だけでも彼女のもとに行ってやりたい。なにもできなくても守ってやりたい。本当になにもできないけど)
木札が浄化されたとして、それからどうするのですか?
大学図書館は四角い鉄筋製の昭和っぽい建築物だ。入口は大きな木製の扉で、そこだけは雰囲気はある(入ってすぐに自動ドアはある)。
夏休みの土曜日だろうが開館中のはずなのに、扉は閉ざされていた。やはり昨夜からの一連の騒ぎが原因だろう。
入口の石段の前で、思玲が顔をしかめる。この扉まで破壊されずに済んだが、俺はここで桜井と横根が俺達を待っていたのを思いだす。
大事なことも思いだした。
行ったところで力にもなれるはずない。かといって護符を復活させたところで、みんなを守れるというのか。この一日の出来事を大急ぎで思いだす。
呪いで染まった怨霊は、護符に触れるなり溶けて消えた。
流範は目に見えぬ速さで飛び、墓石をひと突きでばらばらにした。木札のない俺なんて丸めた新聞から逃げるゴキブリ程度だったけど、その流範も護符には抗えなかった。
生身のカラスなど、いともたやすく抜け殻にしてしまった。
おぞましい鬼だって、瞬時に二匹も消した。
峻計にしても……、俺を見て厄介だとたしかに言った。護符を持つ俺が面倒な存在だと――。
俺でなく護符の力がなにより必要だ。だったら……、ひたすら黒羽扇の邪悪な光を避けて、あいつへと近づく。復活した護符を直接押しつける……。
俺一人では無理にしても、チームプレイなら可能性があるかも)
思玲が門をくぐる。……自動ドアは開かない。
彼女は俺を脇に抱えなおし、ガラスドアを無理やり左右にひろげ、
ようやく落ち着く世界に入った。いきなり気力が復活する。
次回「完全アウェイ」