三十八の二 それが合図だ
文字数 2,242文字
フードを深めにかぶった小鬼が、申し訳のかけらもない顔で俺をにらみあげる。
思玲様には伝令をつかさどる式神が二羽いたが、一羽は流範の使いの鴉などにやられやがった。大燕は死しても言を伝えるはずなのに、一羽はいまだ行方不明だ。奴らの伝令の飛び蛇どもは、俺がこっそり処分したけどな。
ところで、さすがにあいつは感づきはじめております
琥珀が画面を片側の手にかざす。
しかし、でかくなりやがって。
あいつは師傅から逃げたあと、横根ちゃんが一人になるのをずっと狙っていた。彼女をお前や桜井ちゃんの庇護においたのは正解だ。
そして、この煙があれば、もしも瑞希ちゃんがピンチになったら人質に使えるかもな。その娘を消しても白虎くずれのくずれしか作れないぜってね
琥珀が苦々しげに言ったあと、思玲へとかしこまる。
思玲が眼鏡をはずしながら言う。
次回「餃子の皮作戦とでも名づける?」