二十八の四 絶対に離さない
文字数 2,264文字
俺は絞める手に力を加える。
人である俺が命じる。
指へとすべての力を込める。見えないフクロウがさらに暴れる。奴の声帯がつぶれた。もはやヒューヒューと情けない音をもらすだけだ。
流範は正午の太陽に照らされたままだ。黒い血が地面に流れて、蒸発するように消えていく。
電話にでるの無理っぽいね。
うん。そろそろ倒れる。でも輸血はいつも車に積んであるから、RHがマイナスでなければ心配しないでね。
ムカッ、陰陽士と呼ぼうね。日本の魔道士イコール陰陽士。分かった?
お代なんて安くしとくよ
俺の腕を裂き、顔を焼き、背骨を砕いた、人であった異形を見おろす。
声が続かない。黒いボロ布のかたまりの前で崩れ落ちる。
流範は俺に片目を向けるだけだ。太陽に赦しを請いたい。琥珀が困惑した顔をそらす。はやく終わらせないと。
ロタマモが消えた場所に、横根瑞希が立っていた。
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