四十三の五 悪しき2トップ
文字数 2,700文字
楊のいやしい笑い声。どこかで無数の羽音もする。
背後の老人が答える。
藤川匠が話を継ぐ。
楊偉天があざ笑う。
藤川匠が破邪の剣をかかげる。
怯えは憎悪に変わる。
老人がいやしく笑う。
俺の眼差しから察しとり、楊偉天が杖を降ろす。
横根が俺のなかにもぐる。
彼女が小声で言う。
俺も叫ぶ。返事などあるはずない。殺していたら皆殺しにする。
陽炎の揺らめきが血の色に照らされている。
あの屋上で俺がかかげた剣は、ずっと光っていた、はずだ。
俺は独鈷杵を左手にして突っこむ。
藤川匠が剣を上段にかまえる。
藤川匠は剣でたやすくはじき落とす。
剣は俺へと向かう。
次回「シャツの中の白猫」