五十の一 弔いの炎
文字数 2,700文字
4.8-tune
手負いの獣がしゃがむ。
水たまりで血を落とし、九郎と琥珀が恐る恐るひろげたリュックサックへ落とす。
琥珀が麗豪へと手のひらを向ける。
迦楼羅は空から監視を続ける。その手の護符はなおも赤く輝いている。
藤川匠のように。
(うまくいくなんて思っていない。でも川田だけを置いていくはずない。……俺は全て見届けてから人に戻ろう。ドーンにももう少しだけ付き合ってもらう。
夏奈はまだ起きない。川田に乗る横根も。雅にくわえられた麗豪も)
片目の狼がしばし考えこむ。また俺へと聞く。
(残酷だけど、彼女には幼い姿でやり直してもらうしかない。俺の青い目を弟が気にしなかったように、横根の容姿は改ざんされて受けいれられるだろう。十歳ちかく若返れたのだからとラッキーかもと、当事者でない俺は思いこむ)
珊瑚の玉も師傅の護布も沈大姐に渡さないとならない。横根と二人で謝っても、思玲は気にしなかった。いまも大きく欠伸するだけだ。
次回「闇冥を灯す人」