九の二 ブドウ棚の下で
文字数 2,283文字
デラはほぼ終わっていた。シャインは今が盛り。
畑の奥をたどるように、麓に向かう。
(本当の暗闇。ブドウの葉の下からでは、盆地の夜景も見えやしない。
俺の心は一向に晴れない。お天狗さんに行ったところで、護符があるとは思えない。カラスにつつかれた背中に、リュックが擦れて痛い。えぐれた首はもっと痛い)
先頭をいく俺は立ちどまる。
(カラスをカラス天狗に進化させる力だろうけど、どうやれば湧いてくるのだ。ほかの力にしてもそうだ。あの護符は、雪の中を一人で登ることによって手に入れた。今回はどうやれば手に入るのだ?
それに敵は香港だけじゃない)
(台湾の異形がドロシーを狙う可能性はあるだろうか。
……俺が彼女のもとへ戻れば、気がかりがひとつ消せる。うまく行けば敵を分散できる。そもそもフサフサとリクトは強そうだ。思玲は知識があるし頭もまわる。この三人ならばタコぐらい撃退できるかも。タカぐらいなら逃げられるかも。ハイエナぐらいなら……)
俺は肥料会社の倉庫を指す。
フサフサをすり抜け、俺は来た道へ向かう。
次回「悪は成敗される」