五十三の一 ガールズカムバック
文字数 3,792文字
４．９－ｔｕｎｅ
あいみょんだ。林道での法董との死闘を思いだす）
（川田は片方の目がつぶれたままで、俺達の記憶も残していた。
横根も気づいたけど、俺とドーンはすぐに分かった。川田は異形のままだ。人の姿をした手負いの獣だ）
（なのに夏奈の記憶は異形の川田を受けいれる。
川田は中途半端に本来の世界へと戻された。中途半端に法具を振るった俺の仕業だ）
（彼女が見えない俺へと尋ねる。
俺には分からないし、それを言葉で伝えられない。うす汚れたセーラー服の横根が電車に乗るのを見送る。夏奈もここから一人きりだ。不安だけど、ドーンと川田も心配だ。俺は友を選ぶ）
（川田は赤信号を平気で渡る。車に轢かれても平気だった。車が大破した。人の目に見える忌むべき異形……。
川田の手を握り走って逃げる）
（十四時をまわると焦りだす。横根がアパートにやってくる）
（彼女は真新しい服を着ている。どう見ても私服のかわいい中学生だ。……ドーンは小学生と言っていた。中一か小六ぐらいってことだ。
似合っているなんて、俺もドーンも口にださないし、だしても伝わらない。珊瑚のペンダントだけが大人びる）
トイレ借りるね
……青龍の時の記憶は消えている
ガーガー
ﾓｿﾞﾓｿﾞ
やめやめやめろ！
？
ぐーすか
迦楼羅が俺にすがりつく）
落ち着けよ
（俺に妙案などない。今度こそ本気で切りつけるべきか）
思玲様は牢に入れられた
（琥珀は夕方にやってきた）
落ち着け。
差し入れは許されたから、婆やが見つくろったものを九郎に持たせた。天珠を没収されたらしく、もう我が主と連絡は取れない。
それでも僕は行かない。ドロシーの顔を二度と見たくない
琥珀は食うなよ
（なんで人の姿に戻っても、こんなことを言わねばならないのだ）
思玲様は川田の状況をご存知か？ 満月の夜までにはなんとかしないとな
（琥珀が浮かんだままで言う。
思玲は失敗とだけ言って、それ以上は告げなかった。すこし年をとろうが、言葉が足りないのは変わらずだった）
期待してねーから平気だし
？
あれね
まったく使ってない
人に戻る方法を検索できる？
（俺の頼みを、琥珀は鼻で笑う）
ｽﾞﾙｯ
香港から日本に向かう道すがら、暇つぶしに調べた。使えそうな宝物がふたつある。ひとつは上海不夜会所有。
本命のもうひとつは影添大社――
……。
……。
貸して！
（俺とドーンは飛びつく。スマホを奪いとる。手書き入力だ）
……聞かないと）
（俺は画面へ器用にくちばしでタッチするカラスからスマホを奪取する）
（いきなり川田が人の声を放つ。ポケットにあったスマホを横根へと投げる。パスワードはドーンが知っていた）
（横根は躊躇しながら立ち上げる。スケジュール欄のメモに記入しだす。
無言でスマホを川田に手渡す。川田が俺へと画面を向ける）
あり得ないよね？
あり得るな。
貉も言っていた
次回 さ、最終回なんかにさせないよ、絶対に
