三十三の二 惑わし惑わされ
文字数 1,796文字
小声で言う。彼女が入り口に走る。でも戸は開かない。
サキトガも姿を見せない。
むせながら怒鳴る。大声だすだけでもつらい。
彼女を見つめる。目くばせとかしない。
ドロシーが天井をにらむ。
俺の意思は伝わった。
微動だにしない戸を引っぱる。ガラスを叩くが割れやしない。
ドロシーが俺の横にならぶ。紅色の唇をなめる。
俺は彼女の肩をつかむ。
次回「奈落へ誘う声」