四十九の三 思玲の矛と盾
文字数 1,799文字
まだ人の形をした異形どもと、人の形をした屑がいるからな
ヒヒヒ……、南京の破戒僧が死んだか。魂は地へともぐったな
麗豪よ。儂は終わりだ。杖をくれてやる。いつか儀式を仕切れ。
……最後に死者の書を儂の手に
法董の仇も取りません。私はあなたを見捨てて立ち去ります
麗豪様。俺も連れていってくださいよ。道案内しますから
九郎め。早くもかしずくか。偉大な魔道具を三つも手にした私へと
(背後から波動の直撃を受ける。
琥珀がスマホを持ち浮かんでいた)
今のはレベル10。
本当の北七にレベル11はもったいない
(麗豪の体はぬかるみにめり込み動かない。衝撃のはずみであろうか、冥神の輪が脇腹に深く食いこんでいる。こいつも終わりだ)
(荒れ狂う雷。
九郎はすでに近い空から逃げている。琥珀はスマホを立てている)
峻計、避雷針だ。解除された新機能のひとつ。もう雷術は無効だ
ズリッ
新月の夜には、僕の体は危機へ勝手に反応する。僕への攻撃は当たらない
(新月自慢ばかりだ。新月にも、あまり強くなれなかった俺は、龍のいた場所を見る)
最悪の鴉と犬が残っているだろ。気にせずに戦え。あと半日だ。和戸も人に戻れ。
……すまぬが哲人はまだだ
(二頭の狼が女性陣を守る。新月の琥珀は気配を追っている。
……俺は最後まで異形でいい。川田と一緒に帰るから)
(ドーンが空から言う。……当たり前だよな。だったら急いで終わらせよう)
ズルッ
沈大姐と一緒にな。こまごましたものは預けておくだと
ポイッ
(天珠を投げ渡される。露泥無がいなくなるのは今度こそ事実かも)……圧倒的感謝
め、目が見えぬ。もはやあの書も読めぬのか。
琥珀よ、ここに来ておくれ。いや、聡民よ、て、手を握っておくれ
(琥珀が憎々しげに楊偉天を見おろす。
そして背を向ける)
琥珀よ……。思玲はお前を許さぬぞ。弟の仇である楊聡民を
(でも琥珀は思玲のもとへと浮かんでいく。楊偉天の目から生気が消えていく)
楊を見送るな。
老師の魂は浮かびあがろうとして、地に引きずられるだろう。そんなものを見るな
(俺も老人から目をそらす。……琥珀が人であった名は楊聡民。思玲の憎むべき相手?)
息子よ。心のどこかに記憶があるのなら、儂を許してくれ……
(老人へと誰も話さない。俺は気を緩められない。あいつらから夏奈達を守らないとならない)
馬鹿犬がさらにでかくなりやがって。峻計はまだいるのか?
あの鴉と犬が逃げると思えない。
松本、どうするのだ?
(お前の主に聞け。でも分かっている。ここから立ち去らないと。
……夏奈が人になっても、おそらく異形である俺は抱えられる。横根は忌むべき存在の川田に乗せられる。みんなで風軍に乗り、町へと向かおう。そこで俺とドーンも人に戻る。川田も思玲も……)
……私達はかわいそうではないらしい。憐れなだけ
哲人。どちらも人に戻ったぞ。桜井はいびきをかいている
思玲がさらりと言う。俺に浮かぶのは、安堵よりもなお強い不安
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