三の三 箱に集う三人
文字数 1,935文字
俺の選択肢はひとつしかない。あまりに現実感がないままに、とりあえず同意する。
キャンキャンキャンキャンキャンキャン!
俺は木箱の前に座り、友へと最大の疑問を尋ねる。だってカラスになるのだろ?
異国の魔法使いに会っていようが、そう思いたい。
瑞希ちゃんは最後まで付き合ってくれたんだぜ。川田は、子犬になってもいつも最前列だった。
……彼女がいた身でも、桜井の笑顔はヤバかったし。哲人にはもったいないぐらいに……。
カカッ、あっちにいこうが、まわりの景色は変わらないからな。あまり期待するなよ
すまぬが哲人のいないときに見分させてもらい、お前の服から選ばせてもらった。
最後に着ていたジャージはださいし、ネット通販で買ったひらひらの服より、こっちのが実戦的だ。
哲人と背丈が違いないのは知っているからな
(俺の一番お気に入りのポロシャツをだぶだぶに着て、俺のとっておきのジーンズを引きずって現れやがる。俺の名義を使いネットで買ったブラジャー(Eの85)まで、ご丁寧につけてやがる。
俺とドーンのあいだに座る)
その横でスーリンが一度だけ深く息を吸う。
女の子の姿のうちに念押ししておく。茶番でなければ、この子もじきにおっかないお姉さんになるのか。それとも、
スーリンが青錆びたふたも開ける。
黒い光が巨大蛍みたいに、よろよろと俺に向かってきた。
それを押しのけるように、透けるほどにブルーの玉から澄んだ光が俺へと飛びこむ。
そんなことだけを考える。
ドーンのやけっぱちな笑い声だけが聞こえて、人としての俺が消える。
次回「大峠のお婆ちゃん」