四十 導きがあるのならば
文字数 3,643文字
悪夢を見る間もなく、俺は起こされる。横根瑞希の声だ。
腰をあげながら尋ねる。中学生の横根がきょとんとする。人の声で聞きなおす。
あの龍が夏奈ちゃん? でかすぎだし。
……ドロシーちゃんは? いろいろヤバいことがあったし。
瑞希ちゃんが透けなくなったけど高校生になっちゃった。清純そうでエモみすらあるけど、俺の声聞こえねーし……。
み、瑞希ちゃんの肩にいるの猛禽賊じゃね? 俺降りて大丈夫?
横根が俺へとうかがう。
俺は人の声をかける。
人の声で返し、心の声を続ける。
言ってみただけだ。
俺の話を聞きながら、彼女は川田の頭をさする。
俺の問いに、風軍が羽根を伸びしながら言う。
代わりに頼まれごとされたよ。青い目で頼りなさげで強そうな人間に伝えろだって。それって哲人だよね?
それでね、このなんにでも効くおまじないは、最初の一言しか力がないから間違えるなだって。
ドーンもいるから始めるよ
ドロシーを救うためのお守り。
横根がドロシーの指揮棒をくわえる。残り少ない明かりで箱を照らす。
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