四十一の三 一緒に飛ぶに決まっている!
文字数 3,598文字
遠かりし朝にふさわしい存在がやってきた。老人さえも顔をゆがませる。
俺は護符に怒りをこめる。
あいつが黒羽扇を向けた先は、中空に浮かぶ朽ちかけたコウモリとフクロウだった。
使い魔達は黒い光を残像のように避ける。
峻計がコウモリへと黒羽扇をかざす。
峻計は口惜しそうに扇を見つめる。俺の存在など目に入っていない。
俺は駆けだし、護符を握る手をあいつへと向ける。
楊偉天が黒羽扇を向ける。俺は灰色の光に吹っ飛ばされる。仰向けに地面に叩きつけられる。
中空で使い魔達が目くばせを交わす。
峻計が嫌味たらしく笑う。そして真顔になる。
目があうと怒りが破裂する。握りこぶしで突っこむ。
あいつが指を鳴らす。峻計の背後に手長が現れる。多足がビルの壁をつたわる。
サキトガはよろよろと笑いながら、 俺へと呼ぶ声をかける。
老人の顔色が変わる。
Tシャツに突っこんだ俺の手を桜井が握りかえす。俺を強く見つめる。
桜井の気がはちきれそうだ。俺は抱えていたコザクラインコに持ちあげられる。楊偉天達を見おろす。峻計は手長へと飛びかかる。
コウモリが消える……。
ひゅん、ひゅん、ひゅん
妖術を切り裂きながら、上空から降りてくる。
楊偉天が杖をかかげる。その目前に劉師傅が着地する。
剣を地面へと突き刺す。
にび色の光が四方へと伝わる。光が地を這う雷となり爆発する。
宙に浮かぶ俺の真下も強烈な術で包まれる。木札が怯え、足もとがしびれる。
巨大な手長が光のマグマにおぼれるように消えていく。壁には半分にちぎれた多足がなおも貼りつき、紫色の煙を吐きだしていた。
俺の意志を感じとった桜井が、俺を多足のもとへと運ぶ。俺は護符を握りしめた拳で、軽自動車ほどもある顔をぶん殴る。
大ムカデはおさまりつつある光の中に落ちる。護符の力と魔道士の術を浴び、もだえながら溶けていく。
じきに光は消えた。
地上には、剣を手にした劉師傅だけが立っていた。巻き添えで破壊された車がくすぶる。もはや楊偉天も手長も多足もいない。使い魔達もどこかへと消えた。……なおも地面を這いずるものがいた。
劉師傅が鋼色の光を放つ。
次回「魂を二つ持つ四羽」