三十三の四 残酷な癒し
文字数 2,107文字
ここから先は滅多にしない。救うわけではないから。……でも、死にかけたママはパパに授けた。人間の群れから、私を救わせるために。
言の葉は、口から伝わる。授けるものにこそ責任がある。受けとってくれるならば、私はあなたを永遠に守りつづける
そんな重いものを受けとれない。なのにドロシーが目をつぶり、顎を小さくあげる。
相性なんかでなく、お互いがひとつになる宿命。そんな導きがあるのならば、ここで彼女を押し倒し、俺が唇を奪う。
あ、ありがとう
(銃弾のあとが残るシャツをひろげる。
断る理由などない。彼女の手を借りながら、大蔵司のシャツを脱ぐ。
大事にしまわれていた衣類の匂い。前ボタンをとめる。俺のサイズよりゆったりしているから、カジュアルな着こなしになる)
彼女は小さな紙袋を持っていた。形見のシャツに包まれていたものだ。それを開ける。
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