三十四の二 松本哲人と四人の姑娘
文字数 2,669文字
……僕は何人にも咎められない。僕は標高四千メートル級に住んでいた。氷点下こそ快適だし、長雨も耐えられる。しかし、この国の夏は耐えられない。とくに盆地の底の下品な暑さはゆるせない。午前中にヨタカで飛んだけど――
ぽつぽつと空から滴が落ちてきた。
場違いな鳴き声がした。
甘えているから激情する。僕は横根タイプが張麗豪よりも嫌いだ。
教えておく。松本にいまの記憶が消えて平凡な学生に戻ろうと、お前には目を向けない。
惹かれるのは桜井夏奈。もしくは二度と会うことないドロシー。横根は人の姿の僕以下だ
横根は甘えていない
(そんな言葉しかかけられない。横根こそ大好きだ。事実なのに言えない。なおさら夏奈が離れそうだから。
俺は杓子で口をゆすぐ。吐きだした水は真っ赤だ。だけど体は絶好調。うずくほどだ。
横根も水鉢から手ですくう)
ドロシー達がやってきて、手水舎で傘をたたむ。
きっぱりと拒否する。いまの五人は、小学校の踊り場にいた六人より弱い。敵ははるかに強い。
僕はボランティアで動いているわけではない。……ロタマモを退治したのはありがたいが、僕は失態を続けている。もう松本から離れられない。
台湾、香港、日本の
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