第234話 4510し・ご・と

文字数 1,128文字

 さてここで大疑問が出てくるんだけれども

 仕事ってなんだろうね

「ゲンム ゲンムのお母さんって会社とか勤めてるの?『商売やってる親戚から頼まれてたまに手伝いに行ったりするけどそれ以外は基本専業主婦だな』へえ お姑さんとかは?『いたけどわたしが小さいころに亡くなった』そうなんだ ねえねえ ゲンムは将来どんな仕事に就きたいの?『わたしにそれを訊くか それってあれだろう わたしがっしゃべれないことを折り込んでの仕事ってことだろ?』ちがうよ」

 ちがうにきまってるじゃないそんなの

「ほんとうの仕事のことだよ」

 とても大事なことだからゲンムとすりあわせたよ
 そうしたらゲンムもたいへんな思い違いをしてることがあるってわかった

「ゲンムはさ シャムがうつ病でほんとにつらい時にこの家に預かって一緒に暮らしてたんだよね『ああそうだよ』それすごい仕事」

 わたしがこう言うとゲンムはわたしの眼を観て真面目に手話した

「『でもお金もらってないぞ』だからだよ」

 ゲンムは不思議な顔をしている 追加して訊いてきたよ

「『ボランティアが尊いってことか』ちがう『じゃあなんだ』それはね」

 与えられた仕事

 これをせいよ って与えられて任された仕事

 なのにみんなこれがやりたい あれがやりたい こちらがお金たくさん とか

「『人の役に立つ仕事ってことか?』近いけど惜しい 惜しいけど根本がちがうよ」

 シャムが出遭うた恩人は

 手ぬぐいかぶるおばあさん

 主婦の仕事を勤めあげ

 嫁の仕事を勤めあげ

 孫のココロも仕立てあげ

 畑仕事もお手のもの

 お土を照らすお日さまよ

 夜露滴るお月さま

 お歌を歌えば我がのこと

 愚かなわたしとのたもうた

 謙虚謙遜改心の

 お手本示すお人なり

 さらに見果てぬ功徳には

 ココロ患う店子たち

 苦しみもがくその背なを

 そうかそうかとなでおろす

 不思議やココロは溶けゆきて

 水は気となり雲となる

 その雲慈雨を降らせたも

 慈雨慈雨大地を固めたも

 世に出る仕事はあるなれど

 ならぬかんにんする仕事

 それこそまことの仕事なり

 お土の中にもぐるとも

 大地をよき世とおろがめよ

 土をもぐりた真ん中に

 お日さまもひとつあるぞいね

 うえしたどちらのお日さまも

 働き通しのその仕組み

 お日さまおちからタダぞいね

 まことのココロが報謝ぞよ

 まことのココロで日を暮らす

 目鼻手足の動きこそ

 まこと世のためひとのため

 神への報謝のお仕事ぞ


「ゲンム だからね ゲンムはえらいよ『わたしはえらくないよ』ううん ゲンムがえらいからゲンムのお母さんもえらいの ゲンムが好きだからゲンムのお母さんも好き ねえゲンム『なんだよ』ゲンムもわたしのこと好いて?」

 こう言ってくれたよ

「『シャムの頃から好きだよ バカ』」
 

 
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