第279話 たとえ浮上できずとも

文字数 574文字

 浮かばれない

 生きているひとにもあてはまるし死人で霊となっているひとにも当てはまる言葉だよね

『ミコ わたしの大好きなバンドが 浮かばれないんだ』
「ゲンム 成仏できないっていう意味じゃないんだよね」
『ミコ スクリーンの多くを占める映画の主題曲と選ばれて世に出るバンドもあれば 素晴らしい曲を作り演奏もこのうえないのに全く見向きもされないバンドもある この違いってなんなんだろうな』

 むずかしい

 とても応えられるものじゃないけどわたしは少しく思うところを言ってみた

「浮かばれないことそのものが既にして浮上していることかもしれないよ だって逆さまの世の中だったら一番低いところが一番高いところってことでしょ」
『逆さま』
「そう 逆さま」
『じゃあ何か ミコは今が逆さまの世の中でトップにいるものは逆さまだから浮上できてるって言うのか』
「そこまでは言わないけど素晴らしいバンドや漫画や小説なんかが埋もれて見向きもされないのってそうでも考えなきゃ辻褄が合わないもん トップにいるものがダメとは言わないよ けれどもおかしい とは思うよ」
『負け犬の遠吠えって言われないか』
「言われてもいいじゃない 事実そうなんだから 運がいいとか悪いとかそういう問題じゃなくて 一番尊い所を一番落としてあるんだよ」
『そうかな』
「そうだよ」
『でもどうして』
「シャムは浮上せず死んだ」
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