第37話 マーケットに流通する本を買えないし借りられないんだよね
文字数 927文字
こういう状態がもうどれだけ続いているんだろうかね。
本を読めない。
ううん、WEBのアマチュア作家たちが載っけてる小説やエッセイは読めるんだけど、マーケットに流通する本を書店で買うことも図書館で借りることもできなくて。
なんなんだろうね。
「おっ。捨無 ちゃん。読書かい?」
「所長。他人のスマホを覗き込むのは問題ありですよ」
「まあまあ。昔は昼休みデスクで読む小説っていったら紙の文庫本だったけどなあ」
「所長は何読んでたんですか?」
「ミステリ、かな」
「所長。『ミステリー』と『ミステリ』どっちが正しいんですか?」
「多分『ミステリ』じゃないかな。おお、源田 さんは新書だね。何読んでるの?」
「『長持ちする仏花の選び方』です」
「・・・・・そんな本があるのかい」
「仕事熱心でしょう」
確かに源田さんは当事務所の生き字引きのような
「結局シャムちゃんは何を読んでるんだい?」
「・・・・・これです」
仕方ないのでわたしは所長にスマホの画面を見せた。
「『ある少女のブログ』?」
「はい。今朝偶然ツイッターのTLに流れて来たんですよ。なんとなくスルーできなくて」
「どんな話だい?」
まあ、いじめに遭ったことのある女子高生が心理学やら社会学やらの学術書を読み漁って研究者になっていじめ根絶のための研究をしようと企てる、っておおまかに説明したらこう言われちゃった。
「救いがないな」
所長はやっぱり怖い。
冬になったらヒートテックの靴下を2枚重ねて履くぐらいの完全中年キャラだけど、スクロールし損ねたスマホの半ページをチラ見しただけでこの不思議な小説の本質を言い当てた。
「シャムさん」
「なんですか、源田さん」
「あなた、その主人公の女の子みたいね」
「わかりますか」
「ええ。一旦死んだ女の子の生き様ってこうじゃないだろうかって」
「源田さんも?」
「ええ。今朝通勤電車の中で読み終えたわ。あなたは主人公の女の子と同じあり得ない高さから」
「源田さん」
「はい、所長」
「言わないであげてくれ」
「はい。シャムさん、ごめんなさい」
「いえ。いいんです」
だって、本当のことだから。
本を読めない。
ううん、WEBのアマチュア作家たちが載っけてる小説やエッセイは読めるんだけど、マーケットに流通する本を書店で買うことも図書館で借りることもできなくて。
なんなんだろうね。
「おっ。
「所長。他人のスマホを覗き込むのは問題ありですよ」
「まあまあ。昔は昼休みデスクで読む小説っていったら紙の文庫本だったけどなあ」
「所長は何読んでたんですか?」
「ミステリ、かな」
「所長。『ミステリー』と『ミステリ』どっちが正しいんですか?」
「多分『ミステリ』じゃないかな。おお、
「『長持ちする仏花の選び方』です」
「・・・・・そんな本があるのかい」
「仕事熱心でしょう」
確かに源田さんは当事務所の生き字引きのような
おねえさん
だから仏花やら榊やらわたしたちの商売に必要なアイテムの研究に余念が無いよね。でも昼休みに読むような本じゃないかな。「結局シャムちゃんは何を読んでるんだい?」
「・・・・・これです」
仕方ないのでわたしは所長にスマホの画面を見せた。
「『ある少女のブログ』?」
「はい。今朝偶然ツイッターのTLに流れて来たんですよ。なんとなくスルーできなくて」
「どんな話だい?」
まあ、いじめに遭ったことのある女子高生が心理学やら社会学やらの学術書を読み漁って研究者になっていじめ根絶のための研究をしようと企てる、っておおまかに説明したらこう言われちゃった。
「救いがないな」
所長はやっぱり怖い。
冬になったらヒートテックの靴下を2枚重ねて履くぐらいの完全中年キャラだけど、スクロールし損ねたスマホの半ページをチラ見しただけでこの不思議な小説の本質を言い当てた。
「シャムさん」
「なんですか、源田さん」
「あなた、その主人公の女の子みたいね」
「わかりますか」
「ええ。一旦死んだ女の子の生き様ってこうじゃないだろうかって」
「源田さんも?」
「ええ。今朝通勤電車の中で読み終えたわ。あなたは主人公の女の子と同じあり得ない高さから」
「源田さん」
「はい、所長」
「言わないであげてくれ」
「はい。シャムさん、ごめんなさい」
「いえ。いいんです」
だって、本当のことだから。