第136話 あなたが花を愛でるなら花はあなたをなぐさめる

文字数 304文字

 事件が起こらないと小説が成り立たないなんて間違いだ

 だって濃い緑の下に隠れて咲くその紫の花って

 事件なの?

「シャムはなんの花が好き?」
「花でなくても別に。葉も根も好き」
「あっ」
「なにモヤ」
「根も葉もないって本来そういう用法?」
「ちがうよ」

 四国はいい

 ただただいい

 エピソードなどいらない

 向こう側から否応なくなぐさめてくれる

 日陰で、くるん、と巻いた紫のつぼみと咲くヒルガオみたいに


「モヤ。わたしはあなたをどんな花にもたとえられるよ。その時々のいじらしさ可愛らしさに応じて。だから花言葉なんて覚えたり調べたりしない。躊躇せずに美醜すら超えて遍く花にたとえてあげたいから」
「あ…りがとう…」
「あなたがすき」
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