第231話 あそぼうよ

文字数 1,297文字

 実はねえ 遊ぶのが苦手だったりするんだよね

 でもこうしてシャムの想いを込めた四国八十八か所のお遍路がこうして高野山で弘法大師さまの息吹をじかにな感じることができて だから あそぼうよ ってゲンムとモヤに甘えた

「なにしてあそぶ?」
「『また石とりか?』ええとねちょっと考えがあるんだ」

 そう言ってわたしはモヤにスマホを借りた

 スワイプしてカメラを立ち上げる

 ちなみにモヤのスマホの待ち受けはシャム

 シャムの写真とシャム猫の写真が半々でフレームに収まってる画像

「‘いちばん小さなものを撮ったひとの勝ち’ゲーム!」

 わたしの声高らかな宣言に ぽかん とするふたり

 かんぱつ入れずに撮ったよ

「…はい! てんとう虫!」
「わ ミコ すごいね いきなりだよ」

 しかも飛んでるのを撮ったからね モヤは拍手までしてくれたけどゲンムは冷静

「『…ほら』」

 無造作に撮ったのを観るとね 花が映ってた

「? ゲンム この花はてんとう虫より大きいけど?」
「『ほら』わ!」

 ゲンムが画面を少しだけ広げるとね

 花びらの上にてんとう虫よりもふたまわりぐらい小さな露が乗っかってる

「球体だね」

 そうモヤの言うとおり 花びらに乗っかった朝露はひらべったく潰れた状態になってるとばっかり思ってたから ゲンムが花の真横から撮ってしかも朝日に照らされて輝いている露がね きちんと立体になった球体なんだよね

 つぶれてなくて きゅうっ て まあるく立ってるって感じ

 3人でゲンムの写真を覗き込んで感嘆しあったよ

 残るはモヤ

 わたしたちが今いるのは公園だけれども ごく普通の児童公園で ゲンムが撮った花の上の露も花壇にじゃなくて うんてい の斜め下の登る方のはしごの根元に咲いて乗っているのであって だけどもモヤはゲンムが撮った花のその隣の魔白な



 モヤはしばらくの間右手の甲の上に顎を乗せるようにして考えていたけど 決まったとなったらあっさり撮ったよ

 白い花びらの上に

 黄色

「『花粉か』あ!ほんとだ! 綺麗!」

 商業ベースの小説ならばもっと遠近法の効果を使った景色や同じ丸いものならば少なくとも宝石のような質量を持つ物体を取り扱うことだろうね

 5歳のわたしにはそれはとてもよくわかる

 けれどもどうねんだいのおとしよりどうしでは’なにもかわらない‘ ってそれは疑問形のようでいて実体はシンパシーを得やすいから

 どうして知らないフリができるんだろうって世の中に信頼はなかなか持てないと思うけどモヤがその花粉を拡大する

 モヤはこの3人じゃなくて宙空にだれかがふわりとふわふわしてるのが観えてるかのように

「ふたりとも観て」

 そう言ってモヤ自身はもう観なかった

「ねえ誰かこの花粉を造れる?」

 それは無理難題だっていうことは誰にもわかってるけどならば厳然としてこの粒子がことわけて細やかな描写を必要とするだろうと分かりきっていることもあってか

 ‘その子たち’は解けなかったことをちょっとは嘆いたけども わたしが囮になって解かす時間を稼いであげた

 はたしてやっぱりそうだった

「『ミコ それってなんだ?』え? これ? これは…決まってるでしょ?」

 神さま

 

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み