第152話 ほんとうのことをほんとうと言い実行しようか

文字数 1,335文字

 ほんとうのことをほんとうと言いかつ実行すること

 これをやっている人間が日本に何人いるだろうか

 世界に何人いるだろうか

 宇宙に何人いるだろうか

「わたしは科学を否定しない。でも、ほんとうのことを言わなくてはならない」
「な、なによ」

 C衣

 かわいそうだけど、言うね

「科学は枝葉末節」
「「「言うなああああああ!」」」

 わたしは過去世において読んだ小説の、間諜を警戒するためにそういう発音が多くなったという日本のある地方の英雄のモノローグに出てきた言い回しを思い出した

『でっ、のような奴』

(司馬遼太郎さんの『翔ぶが如く』の一節を参考にさせていただきました)

 でっ=大工 を軽んじる意味合いの表現では決してないだろう

 ただ、科学=神 という詭弁を打ち砕くための一撃だったんだろうと思う

 あ、更に間違えた

 科学者=神
 
 あるいは

 科学を盾に取る官位ある人=神

 こういう恐るべき詭弁を忌み嫌い粉砕するための表現だったんだろうって思う

 ううん
 科学に限ったことじゃないよね

 たとえばお仕事小説なるものがあるけど

 その際に描かれる職業やその職業に携わるひとたちの職業上の特性や行動パターンを『この世のすべて』のように表現する描写が随所に見られる

 それって『世の中心はこの業界』という、自らを神格化して崇め奉られたい欲求のあらわれじゃないのかな

 それってフォロー数が一桁台でフォロワー数が百万人のインフルエンサーと呼ばれるひとたちの手法と同じじゃないかな

 しかもそのインフルエンサーの手法がおかしなもので

 一旦フォローされてフォロバしたらすぐに外されて、よく見たらフォロー数に対してフォロワーの数が桁違いに多かったりするようになっている

 そう、つまり

 あなたのことなどどうでもいいんだよ

 インフルエンサーも、科学者も、学者も、官位ある人たちも

 全員、ほんとうはあなたのことはどうでもいいんだよ

 ほんとうにあなたのことを絶対に捨てないのは

 弘法大師さまなのに

 日の女神さまなのに

 お不動さまなのに

 そうしてね

 あなたの家の神棚におわす、日の女神さまの分身と、氏神さまの分身なのに

 あなたの家のお仏壇におわすあなたの家の宗派の仏さまなのに

 墓とそれに通ずる極楽か地獄かにおられるあなたのご先祖なのに

 あるいは里山におわす、山の神さまなのに

 世の多くの人が、思い違いをしているよ

「お願いです。太陽を返して」

 C衣が最初に言った
 
 悪にも強ければ善にも強いということなのかな

 C衣の次にA斗、最後にB平が言った

「太陽を」

 わたしは静かに言ったよ

「わたしごときに言っても無駄。ココロで五体投地して日の女神さまに謝り果てて。今この交番の外の空に昇ってきているお月さまに謝り果てて」

 奥のテーブルに静かに座っていた年配の警官が初めて口を開いた

「南無大師遍照金剛」

 モヤが、はっ、とする

 シナリが彼の方を向く

 遍路をするにあたって初めてその言葉を覚えた大学院の3人が彼の言葉の音声を今一度唇につぶやいたようだ

「「「南無…大師遍照…金剛…」」」

 スマホの中から、わあ、という歓声があがる

 再生し放しになっていたライブ配信の中で空を見上げていたひとたちが思わず発声したらしい

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