第257話 いやなことはみうちにさせよ

文字数 1,819文字

 シャムは過去世からの落としに落とされ辛酸の上にもまた辛酸を舐めてきたその実践だけでなくって神様の理や仏さまの道や みせしめ それは決して晒し者にするというみせしめの意味ではなくて自分の失敗をどうか活かしてくれよというそういうみせしめの蓄積された情報を積み重ね掘り下げして何代も千代も万代も地層の不揃いなミルフィーユみたいになっていて

 だからわたしの中にもシャムのそういう一切合切が溶け込んできててけれどもどうしても腑に落ちない得心できないエピソードがあった

 お釈迦さまが過去世において妻子を布施として他者に渡してしまうというエピソード

 ジャータカ=本生話にあるエピソードなのだけれどもつまりは奥さんや子供を奴隷としてそのまま渡してしまうということだ

 どういうことなんだろう

 シャムがこのエピソードをエピソードそのものの記憶としては持っていてその事実自身の内容は伝わってくるんだけどそれをどのようにシャムが受け止めていたのかがまったくわからない

 わたしが人間としてこの妻子を布施する行為をひとつも理解できないというのがほんとうのところだ

 お釈迦さまのきわめて重要なお言葉としてわたしは次の言葉をシャムから引き継いでいる

『先人と同じく古き小道を見つけたのだ』

 シャムはこのお釈迦さまの言葉を持って『新しい物語じゃなく古い小道を』と言い換えた

 わたしはそのお釈迦さまに関わる言葉の核心に迫るようなもうひとつ重要な更なる本質を目指す道を示されたように思える言葉にも出会った

『古いものが新しいのでなく新しいものが古いのであるぞ』

 温故知新 という言葉があるけれどももしかしたらとんでもない取り違えをしていたのかもしれない

「放っておくと単に羽振りのよかった昔に返りたい程度の中途半端な昔かもしれない」

 こう考えると次々と他の項目も噛み合ってくる

 殿様のようなちょんちょんにされていた自分がその時の殿様そのものの生活をしていた時代に戻りたいと考える人間がいたとしたらせいぜいそれは100年レベルほどのちまちました昔でしかない

 自分が想像し得る程度の古きものは後退でしかない

 そうじゃなくてそのもっと昔のもっともっと昔のもっともっともっと昔の万年十万年百万年千万年無限の無限のはじめのはじめ起源の起源元の元まで行き着くとそれは誰も観たことも聴いたこともなきまったく『新しき』状態だったんじゃないかなあ

 新しく新しく決して後戻りしない古い道

 その古い道の中にもしお釈迦さまが過去世において既にして気づいて現実にほんとうのほんとうに実践したのだとしたら

 この言葉もココロから得心できるよ

『いやなことは身内の血統にさせるのだ』

 今の世はそれとは逆さまだろうと思うよ

 おそらく政治家と呼ばれるひとたちの誰ひとり自分の子供を厳格に厳正にあつかうことがないと思うよ

 最後まで見届けるといい

 もしも戦争が起こったときに

 政治家のひとたちが真っ先に自分の子を兵隊さんとして戦地に送り出すかどうか

 とことんの最後の最後まで見届けるといい

 利益多いポストの後継から真っ先に自分の子を外すかどうか

 苦が楽だというのはわたしはほんとだと思うな

 まず自分が利益を放り出してしまえば誰に後ろめたいこともない

 自分だけでなく奥さんも利益を放り出してしまえばますます後ろめたくない

 自分だけでなく奥さんも子供も利益を放り出してしまえば更に更に後ろめたさのカケラもなくなっていく

 お不動さまは奴僕の行をなさるからこそ縄で絡め取って悪心を剣で断ち切ってひとに改心させることができるんじゃないかなあ

 そうして一族郎党にいたるまでがさあ

『ははは 一文無しですわい!』

って笑いに笑えば身軽も身軽 風に吹かれてぷらりぷらりですっごく爽快なんじゃないかな

 一文無しってことはさ

 借銭も無しってことなのかなあ

 これはわたしがシャムの記憶とそれから今新しくお示しいただいた

『古いものが新しいのでなく新しいものが古いのであるぞ』

っていう言葉と重なってくるような わたしにとってはそんな風にココロにふうと入ってくるんだよね

 お釈迦さまの妻子を布施する行動は今の世にすれば身勝手か虐待かっていわれるんだろうけれどもよくよくよくよく考えてみればね

 いやなことは身内にさせよっていうそのことと

 新しくて古いこと


 わたしの5歳のきわめて赤ちゃんに近いココロで持って受け止めるとそうとしか思えないんだ

 おかしいかな

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み