第181話 ミサイルにぃ…勝ぁつ!
文字数 2,327文字
モヤとわたしはギャランに駆け込んで、第七十一番札所 剣五山 千手院 弥谷寺 に向けてアクセルを全開にした
海を挟んだ隣国からの大陸間弾道弾、つまりミサイルが移動してきているのを肉眼で観ながらどうしてお遍路のお寺に向けて車で往くのか、気狂いと思われるかもしれないけれどもわたしたちは決して狂ってない
狂ってるのはこのみすぼらしい鉄の塊を動かした大馬鹿者だろう
馬鹿なことの証拠には他者を馬鹿と言う姿だ
けれどもこの馬鹿げた鉄の塊は極めて重要な結果を生む
あたかも在宅介護を脅迫まがいのやり方で逃げ遅れた末子にまるで末子が悪いかのような錯覚を抱かせながら介護のすべてを家政婦代わりにやらせるような人間と同様に、ほんとうにミサイルを使って多少の犠牲が出た方がホンキ度がわかるだろう程度の判断根拠でスゥイッチを押した腰回りの肉付きができれば直視したくないレベルのその人間のほんとうの姿なのだろう
モヤはまるでゼロヨンのような疾駆で弥谷寺にギャランを到着させ、わたしは完全な停止までの3秒を待つのも惜しかったのでシートベルトを外しドアを開け、天空に怒鳴った
「神の国をなんとする!!」
おそらくはセンシティブの極地なのだろう、『神の国』というその言葉は
けれどもよく考えてみてよ
八百万の神さまがお護りどおしのこの国が、神の国でなくてなんとする
聖徳太子さまが大陸に使者を遣わしたその国書には日出ずる国の天子が日没する国の天子につつがなきやと毅然たる筆致で燦然たる外交史の一ページを刻んだけれども、わたしはこの狂った馬鹿者のミサイルをいかにかせんとするよ
だって、できるはずだから
そうしてこのミサイルを飛ばせた気狂いに内通してまるで武家の勝手口を開け放って賊を誘き入れるような売国の卑怯者で更なる大馬鹿者が
ゼニンだよ
寛容というのは、虐げられるひとにして初めて口にしてよい感覚であって、ゼニンのごとき明晰で冷静沈着ふうな『人間できてる』っぽく演技力で誤魔化している卑怯者どもが口にする寛容は、『この私を大目にみてくれよ』という身勝手わがまま好き勝手な解釈に基づく行動であって、だからわたしは今野にあってまるで平べったく地に茎が倒れかかって這っている学術名すら誰もつけようとしない微細な花にこそ寛容を許してあげたいんだよ
「シャ、シャム!」
モヤが指差すと寺院の向こうに見える樹木という樹木にそれが観えた
わたしが過去世においてやさしき宮司さまが神職の後を継ぎしその神社の裏にある一級河川にかかる鉄橋のそのオレンジ色の鉄骨の一本一本、平行なもの垂直なもの、そのビス一点一点にも漏れなくいるかのような
数百羽のトンビ
そのトンビたちが鉄骨を離陸しては中空に急上昇し、河川の上空を舞う強風と上昇気流とでハリアー戦闘機のように拮抗する力で翼を広げた最大サイズの状態でホバリング静止し、そのストップモーションから突如羽を畳んで急降下しながらやはり鉄骨から直線をおそるべきスピードで飛行してくる二羽のトンビ同士が空中戦を展開する
まるで一騎討ちのように、飛んではバヂヂィ!と接触する寸前まで漸近して刃をガキィ!と削り合わせてすれ違う武士のように
その過去世のシーンが一気に目の前に顕現される
数百羽のトンビが、トンビ同士ではなく、その気狂いのみすぼらしい大陸間弾道弾に向かって
「おぉ…おぉ…」
「うむぅ…うむぅ…」
わたしとモヤは女子らしからぬ声を出す
出ないんだ、他の呟きが
まったくもって出ないんだ
「「「「「ヒョオオ!!!!」」」」」
トンビたちのスピードは、間違いなくその馬鹿者の撃ったミサイルの音速を遥かに凌駕している
そうして超音速、光速に漸近するスピードで弾道の先回りをして旋回・ホバリング静止をした状態から…急降下し、アタックしていく
みなさん、アタックの意味がわかるだろうか
攻撃、という風に誤訳してはいけない
アタックとはぶつかるんだよ
カラダじゃない
命を、ぶつけるんだよ!
「ああぁ、ああぁ」
「うぉ、うぉ、うおぉぉぉん」
モヤとわたしは完全に口を大きく開けて、瞬時に涙が止まらなくなって漏れるように流し続けたよ
トンビたちが、数百羽
次から次にと命をぶつけていく
四国の、弘法大師さまがお生まれになった讃岐国のお山に結集して
ピィー、という聲
ヒョロロォー、とそれは辞世の句
トンビたちの、おさらば、という歌声
「「「ガッタ!ガッタ!ガ・ガ・ガ・ガ・ガッタ!」」」
冷静にしてかつ熱くして古の武士のごとく雌雄ともどものトンビたちは
とうとう人里離れた山中にその卑怯なミサイルを撃ち落とした
撃ち落としたのだ
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァンンンンンンンーーーーーン!!!!
本来わたしは過去世において書いた小説でこういう類の擬音を好まなかった
ただ単に音の激烈さをさも重要なことが起こっているかのように見せるためだけのこけ脅しの擬音を好まなかった
けれども今わたしは上記のようにこう描写するしかない
ほんとうにトンビたちが滅ぼしたミサイルは、このとおりのボリュームで墜落し、不発のまま潰えたのだから
「モヤ 忘れないで」
「トンビをかい」
「ううん トンビだけじゃない」
わたしは、おもわず手を合わせて、最敬礼のつもりで唱えたよ
「南無阿弥陀仏とゆうことはまことのこころとよめるなり まことのこころとよむうえは ぼんぶのめい心にあらずまったく仏心なり…モヤ」
「はい」
「今の爆発で亡くなったトンビ・鳥獣虫微生物花草樹木地中の微生物空気中の微生物にいたるまで」
「はい」
「人間の長久を守りたもうた」
「はい」
ああうれしや南無阿弥陀
海を挟んだ隣国からの大陸間弾道弾、つまりミサイルが移動してきているのを肉眼で観ながらどうしてお遍路のお寺に向けて車で往くのか、気狂いと思われるかもしれないけれどもわたしたちは決して狂ってない
狂ってるのはこのみすぼらしい鉄の塊を動かした大馬鹿者だろう
馬鹿なことの証拠には他者を馬鹿と言う姿だ
けれどもこの馬鹿げた鉄の塊は極めて重要な結果を生む
あたかも在宅介護を脅迫まがいのやり方で逃げ遅れた末子にまるで末子が悪いかのような錯覚を抱かせながら介護のすべてを家政婦代わりにやらせるような人間と同様に、ほんとうにミサイルを使って多少の犠牲が出た方がホンキ度がわかるだろう程度の判断根拠でスゥイッチを押した腰回りの肉付きができれば直視したくないレベルのその人間のほんとうの姿なのだろう
モヤはまるでゼロヨンのような疾駆で弥谷寺にギャランを到着させ、わたしは完全な停止までの3秒を待つのも惜しかったのでシートベルトを外しドアを開け、天空に怒鳴った
「神の国をなんとする!!」
おそらくはセンシティブの極地なのだろう、『神の国』というその言葉は
けれどもよく考えてみてよ
八百万の神さまがお護りどおしのこの国が、神の国でなくてなんとする
聖徳太子さまが大陸に使者を遣わしたその国書には日出ずる国の天子が日没する国の天子につつがなきやと毅然たる筆致で燦然たる外交史の一ページを刻んだけれども、わたしはこの狂った馬鹿者のミサイルをいかにかせんとするよ
だって、できるはずだから
そうしてこのミサイルを飛ばせた気狂いに内通してまるで武家の勝手口を開け放って賊を誘き入れるような売国の卑怯者で更なる大馬鹿者が
ゼニンだよ
寛容というのは、虐げられるひとにして初めて口にしてよい感覚であって、ゼニンのごとき明晰で冷静沈着ふうな『人間できてる』っぽく演技力で誤魔化している卑怯者どもが口にする寛容は、『この私を大目にみてくれよ』という身勝手わがまま好き勝手な解釈に基づく行動であって、だからわたしは今野にあってまるで平べったく地に茎が倒れかかって這っている学術名すら誰もつけようとしない微細な花にこそ寛容を許してあげたいんだよ
「シャ、シャム!」
モヤが指差すと寺院の向こうに見える樹木という樹木にそれが観えた
わたしが過去世においてやさしき宮司さまが神職の後を継ぎしその神社の裏にある一級河川にかかる鉄橋のそのオレンジ色の鉄骨の一本一本、平行なもの垂直なもの、そのビス一点一点にも漏れなくいるかのような
数百羽のトンビ
そのトンビたちが鉄骨を離陸しては中空に急上昇し、河川の上空を舞う強風と上昇気流とでハリアー戦闘機のように拮抗する力で翼を広げた最大サイズの状態でホバリング静止し、そのストップモーションから突如羽を畳んで急降下しながらやはり鉄骨から直線をおそるべきスピードで飛行してくる二羽のトンビ同士が空中戦を展開する
まるで一騎討ちのように、飛んではバヂヂィ!と接触する寸前まで漸近して刃をガキィ!と削り合わせてすれ違う武士のように
その過去世のシーンが一気に目の前に顕現される
数百羽のトンビが、トンビ同士ではなく、その気狂いのみすぼらしい大陸間弾道弾に向かって
「おぉ…おぉ…」
「うむぅ…うむぅ…」
わたしとモヤは女子らしからぬ声を出す
出ないんだ、他の呟きが
まったくもって出ないんだ
「「「「「ヒョオオ!!!!」」」」」
トンビたちのスピードは、間違いなくその馬鹿者の撃ったミサイルの音速を遥かに凌駕している
そうして超音速、光速に漸近するスピードで弾道の先回りをして旋回・ホバリング静止をした状態から…急降下し、アタックしていく
みなさん、アタックの意味がわかるだろうか
攻撃、という風に誤訳してはいけない
アタックとはぶつかるんだよ
カラダじゃない
命を、ぶつけるんだよ!
「ああぁ、ああぁ」
「うぉ、うぉ、うおぉぉぉん」
モヤとわたしは完全に口を大きく開けて、瞬時に涙が止まらなくなって漏れるように流し続けたよ
トンビたちが、数百羽
次から次にと命をぶつけていく
四国の、弘法大師さまがお生まれになった讃岐国のお山に結集して
ピィー、という聲
ヒョロロォー、とそれは辞世の句
トンビたちの、おさらば、という歌声
「「「ガッタ!ガッタ!ガ・ガ・ガ・ガ・ガッタ!」」」
冷静にしてかつ熱くして古の武士のごとく雌雄ともどものトンビたちは
とうとう人里離れた山中にその卑怯なミサイルを撃ち落とした
撃ち落としたのだ
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァァァァンンンンンンンーーーーーン!!!!
本来わたしは過去世において書いた小説でこういう類の擬音を好まなかった
ただ単に音の激烈さをさも重要なことが起こっているかのように見せるためだけのこけ脅しの擬音を好まなかった
けれども今わたしは上記のようにこう描写するしかない
ほんとうにトンビたちが滅ぼしたミサイルは、このとおりのボリュームで墜落し、不発のまま潰えたのだから
「モヤ 忘れないで」
「トンビをかい」
「ううん トンビだけじゃない」
わたしは、おもわず手を合わせて、最敬礼のつもりで唱えたよ
「南無阿弥陀仏とゆうことはまことのこころとよめるなり まことのこころとよむうえは ぼんぶのめい心にあらずまったく仏心なり…モヤ」
「はい」
「今の爆発で亡くなったトンビ・鳥獣虫微生物花草樹木地中の微生物空気中の微生物にいたるまで」
「はい」
「人間の長久を守りたもうた」
「はい」
ああうれしや南無阿弥陀