第238話 観ないよ聴かないよ言わないよ

文字数 764文字

 観ておる 聴いておる 知っておる
 神仏のおつけになる帳面

 観ザル  聴かザル  言わザル
 おサルさん三人娘

 
 真逆に感じられるけれどもものごとは裏の表があるのであってそれはこの歌と照らし合わせれば得心いくって思うよ


 人の悪しきに目をかけて

 自分の悪しきは棚に上げ

 昨日も暮れたきょうもまた

 あるやないやにとらわれて

 明けても暮れても罪ばかり

 流れて早き月日なり

 近づくところは墓場なり

 ほんに思えばみなさんよ

 生まれた初めがあるなれば

 死ぬる終わりがあると知れ

 上は帝を初めとし

 下は卑賎のひとびとも

 逃れがたきは無常なり

 独生独死のならいにて

 独り生まれて独り死す

 この息ひとたび切れたなら

 きょうかたびらを身にまとい

 六文づつを手にかけて

 白木造りのくわんの中

 こくびかたげて思案する

 姿みるこそあわれなり

 

 そうしてね おサルさん三人娘のこれまでの生きざまをシャムの記憶をねじ込まれたわたしがひもといていくとね

 自分を棚に上げない

 棚に上げないから
 曇ったレンズでは観ない
 歪んだイアフォンでは聴かない
 へしゃれたマイクでは歌わない


 それよりも観えない鍵盤をココロで弾き

 聴こえない弦をココロで弾き

 喋れない言葉をココロで叩く

 
 だから’ほんとうのこと’なんだよ

 だから’ズレてるのにど真ん中’なんだよ

 だから’天にも届き地にも響く’んだよ


 シャムがおサルさん三人娘と一緒に日々を過ごしたように

 わたしも一緒に過ごしたい

 
「あらためまして カンテンよ」
「ミコチャンアリガトウ チョウノダヨ」
「『もういいだろう ゲンムだ』」

 わたしはにっこりして観ないカンテンさんのココロに笑顔を届け 聴かないチョウノちゃんのココロにけらけら笑いを届け 言わないゲンムのココロにはぱかっと口を開けて言語を届けた

「ミコだよ よろしくね!」
 
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