第164話 ゴミ出しの仕方がわからなければわからないと言おう

文字数 935文字

 松山市内の同行という約束だったから、シナリちゃんとタイシくんとはここでお別れだ

 モヤから餞別のスピーチをふたりにしてあげるように促されてわたしはした

 選別のスピーチを

「納豆の発泡パックの、納豆の上にかぶせてあるビナイルのシートを燃えるゴミに選別すればいいのか燃えないゴミに選別すればいいのか自分でゴミ出しをしたことがないために分からないんだったら分からないってきちんと言うことのできる大人になってね」
「「?は、はい…」」

 すぐにモヤからツッコミが入る


「シャム。それって何の目的でそういう話をするの?しかもその餞別とうまくかけたつもりのそれって選別じゃなくて『分別』」

 知らない

 知らないよ、モヤなんて

「シャムさん。そういうことがあったんですね」
「わかってくれる?」

 シナリちゃんに続いてタイシくんも言ってくれた

「僕もわかります。しかもそれはすごく大切なこと。知ったかぶりをする本人はこの程度の嘘ならば差し支えないと思うかもしれないでしょうけど、嘘をつかれる相手からしてみれば心身共に疲れ果てるでしょうから」

 そうなのさ

 そうなのさ

 もいちど言うとそうなのさ

 相手の献身意にかけず

 我が身の権威を鼻にかけ

 プライド暗いとブラインド

 観たいものだけ目にかけて

 自分に都合の悪しきこと

 ココロを覆うて知らぬフリ

 末世子孫に託さずに

 我が身の栄光ご来光

 やがて臨終のその時に

 それでもあなたの人生を

 尽くしましたと言わないと

 死んでも死んでも死にきれぬ

 恐るべきかなその我欲

 あたかも神託すり替える

 国賊逆賊悪鬼神

 まことのことを偽りつ

 たわ事ばかりを触れまわる

 末は博士か大臣か

 そんなものなどいらぬもの

 真実心底欲しいのは

 まことのこころのそのまこと

 目の膿すくなき若人よ

 どうぞわたしを観ておくれ

 どうぞ一寸聴いとくれ

 あなたの誠心観せとくれ

 老いたる姿のその老いは

 いつしか威張りと成り果てる

 酷なことかも知れぬけど

 子孫に害を為す前に

 まごころ尽くして死にましょう

 さあ生きましょう死にましょう

 天寿の満つる最期まで

 まごころこめて生きましょう

 生きて死骸の残雪を

 娑婆の黒土に咲かせましょう

 ああさようならさようなら

 さよなら未来の若人よ

「「「「おさらば」」」」

 
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