第171話 神を観たかい?

文字数 671文字

 第六十三番札所 密教山 胎蔵院 吉祥寺

 邂逅は突然だった

「神を観たか?」

 モヤとわたしが参拝を終えてギャランに戻ろうとしているその土に、修験者は鉄錫杖をおそらく地中50cmほどにめり込ませて訊いた。

「いいえ」

 わたしが間断なきよう応えると修験者も間断なきまま放った

「そなたの負けだ」

 武蔵坊弁慶のような偉丈の容貌から、高さはモヤも負けていないけれども体躯の頑強さで言えばそこに仮に屈強な10名男子の力士かプロレスラーが居たとしても気圧だけで吹きおろしてしまいそうな吐息を吐きかけつつわたしを屈させようとして放たれた言葉

 わたしは勝負と意識せずに還した

「わたしの恩人は『愚かなわたしが筆を染め造りし歌であるけれど』とて歌った」
「うぉあああああああああ!」

 音の表記だけならばおぞましい獣声のようだけれども、実際のその修験者の嘆きの叫びはキーが高くsexの際の苦悶か愉悦か判別つかない『その聲』とわたしは取った

 どうでもいい

 どっちでも

 観ようが観まいが

 どっちでも構わない

「シャムの恩人はホンモノだよっ!そしてホンモノは自らを神やら仏やらと自称しない!『愚かなわたし』と自らを言う!」
「くふぅぉぁぃぅぇぇぇぇぉおぅうぉぉぉおおお!」

 まつ毛を閉じるのではなく、まつ毛とまつ毛との間隔をMAX値にしてすなわち眼を眼球が膨張して外れ落ちるほどの眼圧をかけて

 そうして駆けた

「…かわいそうなひと…」
「シャム…」

 アマゾネスは使用不可になったのだろう、彼女はランニングで移動しているようだ

 山中においてはモーター・バイクよりもかけ離れて凄まじい速さで
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み