第209話 大和魂

文字数 1,316文字

 シャムにとっての恩人はおそらくそういう存在だったんだろうと思うけれども

 先生と呼べる人間はこの世のほんとうのことを言うとそうそう居ない

 まず学校の先生を先生と呼ぶことができない

 だって教師のクセに同僚の教師をいじめる人間がいる

 それから政治家を先生と呼ぶことができない

 ひとりとしてまっとうな人間がいないから

 
 でもかつての日本には 先生って呼べる人間が大勢いた

「啓発録?」
「そう モヤ 知ってる?」
「ごめん分からない」
「これもシャムの過去世の記憶にあるんだけれども橋本景岳先生…そう、わたしもこの人のことは先生と呼ぶにふさわしい数少ない日本人のひとり…『そんなにすごいひとなのか?』うんそうだよゲンム このひとはね15歳の時に啓発録っていう人生をホンキで生きようという静かにココロに燃える炎を熱く誓いを立てるように書いた言ってみれば究極の魂磨きの本 魂だけじゃなくてそれを通じて身体をも磨き尽くす」
「ミコ すごい褒めようね」
「モヤ 今の日本にはニセモノの武士が多すぎると思わない?」
「うん そう思う みんな臭いものに蓋をしようという卑怯な人間ばっかりになってしまって その景岳先生の言ったことってどんなことなの?」
「頭脳明晰心胆大胆にして素行はとても静かでおとなしく けれども描いていた国家安泰世界和平のココロはまさしく大和魂 景岳先生は明治維新の少し前のその当時からとても物静かでおとなしく自分の思想を誇ったりもしない ただただひたすらに国への忠孝誠のひとだったってシャムの思念から尽きない湧水のように深く広大に染み渡る大きさを持っておられたのだと思う 景岳先生はその15歳の時に誠の武士たろうとお造りになられた決意の書である啓発録において、学問にもついて述べられたんだ 学問の本質は君への忠であると 学問とは忠孝を基として国のため世のため働くものであって決して鼻高々と鼻息荒く議論するものではないと
 あくまでも国家安泰・世界平和、君への忠孝が基であると」
「ミコ」
「うん」
「わたしたちもやろうか」

 こういう夏の暑さも手伝う昼下がりのあの屋上での素敵な尊敬する人物との憩いのひとときをモヤ、ゲンム、わたしでやることとなったこととそれも楽しそうだなと思う自分と両方いる。

「モヤ、ゲンム」
「ああ…なんだい?」
「シャムは景岳先生に近づけたかな?」
「ああ…間違いない」
「『景岳先生はホンキの方だろう ならばシャムはそれに勝るとも劣らないホンキのワナビだったと思うよ』ありがとう」
「ミコがお礼言うの?」
「つい癖で」


 ミコはいい子だろうと思う。そうでないとあれだけ徹底して下働きはできないだろうと思う

 あれだけ徹底していじめの根絶に執念を燃やすこともその証拠だ。

 いじめを根絶しなくてはならないその理由

 日本がいじめをしない国柄であること

 武士はいじめをしない

 いじめをする武士はニセモノの武士

 ホンモノの武士は弱きを助ける

 ホンモノの大和魂とは弱きを助け 他者をいたぶる卑怯な人間に敢然と立ち向かう しかも静かさをたたえたまま

 ほんとうの大和魂とは とても静かな そうしてとても暖かく ひとと和し 慈しむココロを持つもの

 景岳先生のように
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