第２６８話 与へよ！されば求むらん！
文字数 2,306文字
与え放しの人生を
「カンテンさん チョウノちゃん お久しぶりです」
「ミコちゃん 元気そうで何よりだわ」
「ミコチャン アイタカッタデス」
「ゲンム 朝ごはんぶり『何言ってんだここに来る電車の中でもずっと一緒だったろうが』まあまあ照れない照れない」
今日はハンディキャップを抱えるひとたちのバンド・スタンド みたいなWEBミーティングの日
ほんとはアパートの誰かの部屋でやってもよかったんだけど101号さん102号さん103号さんが毒気に当てられちゃうからね
なんの毒気かって？
そりゃあわたしの色香ですよ
「『何くだらない妄想してんだ アパートでできない理由はただひとつだろうが』」
WiFiがないから
仕方なくわたしたちは市民会館のカンファランス・ルームをレントしてON AIR する
英単語を並べ立ててミュージシャンぽくしようとしたけど最初の ‘市民会館’ ていう単語がすべてを打ち消しているよね
まあそれはそれとしてこの辺境の地の箱モノ公共施設であるカンファランス・ルームはねえ
もう最高！
防音仕様の部屋もいくつもあってわたしたちのような楽器を持ち込んで控えめではあるけれどもジャムるようなミーティングの団体には最適だよね
でも両隣の防音部屋から微かに聴こえてくるのは詩吟と民謡だけれどもね
「チョウノちゃん ここに来るまでの間男子に声かけられなかった？」
「？ イイエ トクニハ ア デモ」
チョウノちゃんはほんとうに不可解な顔をしているのは事実そういう対象とはならないと思ってるんだろうけどもね ちょっと心配になる答えが返ってきた
「コエハカケラレナイデスケド ワタシノウシロノケシキヲスマホでトッテルヒトハナンニンカイマシタ ハレテテヤマガキレイデシタカラ」
「チョウノちゃん 気をつけてね」
「エ？ ナニヲデスカ カンテンサン？…アア ワタシガケシキヲトルノノジャマニナラナイヨウニデスネ」
チョウノちゃんのこういう控えめなところこそが男子たちにはいいんだろうけど
「ゲンムこそ写真の邪魔にならないようにね『やかましい』」
せっかくなので事務局でプロジェクターを借りてきてプレゼン用のスクリーンに照射して会議に臨んだよ
「さあ準備OKよ」
4人してノートPCの前に並んで座ってカンテンさんがリーダーらしく口火を切ってくれた
「こんにちは 北の地方の 観ない 云わない 聴かない の三人娘と ミコちゃんズ です」
「こんにちは 東の地方の ガンズ・アンド・ホーズィズです」
ホーズィズなんていうから ガンズ・アンド・ローゼズとローリング・ストーンズの‘ワイルド・ホースィズ’から命名したのかと思ったら
法事ズだって
お寺の住職の跡取り息子と神社の神職の跡取り娘のふたりユニットで
「ハロー！ 愛してまぁす！ RCザクザクセッション です！ これで最後の曲になっちゃいました！」
清志郎さんを偏愛するRCサクセションのコピーバンド メイクは完璧だけれども体型は間に合わなかったみたいだしミーティングのキックオフなのに最後の曲だって
「どうも 南の地方の ヒヘホー・ハヒッフ・ホーヘフホハ です どうも」
イエロー・マジック・オーケストラのコピーバンドらしいけどたぶんこのバンド名だとなにがなんだかわからないと思うけど
「うぉぉおおいやーっはっはー！ Sexy・Beatlesどわうぉおおいやあ！ 西へ！西へ来ぉいぃぃやあ！」
ほとんど叱られないだろうかと思うバンド名だけどホンキ度から言えばこのひとたちが一番ホンキだと思う
ミーティングはうってかわって極めて実務的に進んだよ
「ミコちゃんズはさぁあ あごめん 長いからミコちゃんずって略すよね でさぁ ミコちゃんずはさあ やっぱその4人の個性？ もう誰がどうやったって真似できないその個性がさあ ストロングポイントだって思うわけぇ」
「僕ら深刻に神社仏閣で神仏を祀ることの将来に危機感を抱いてるんですよね ほら 御朱印とかパワースポットのブームで神社や寺院に訪れるひとは増えましたよ？ でも神社は神さまを祀るわけで本分は神様に奉仕して神事を行うことが本分なわけですよ だからその寄進？ 経営 ってドライに考えたら地元の氏子さんたちにご負担をおかけしてて
「寺院も同じなんですよね 結局は地元の檀家さんがそういう経営面を支えてくださってるわけで 実際問題檀家のおうちの若い方達が‘神も仏もない’って御朱印やパワースポットをアイコニック？ であってますか？ インフルエンサーさんがやたらと使いたがるアイコニック的な え？ ニックに的をつけると アイコン的的で重箱だって？ 知らんわなそんなことは」
「RCザクザクセッションのザクザクセッションはWEBやらSNSを通じて埋もれるバンドたちが世に出られるように 埋もれた秘宝のようなセッションをザクザク掘り出せるようにって願いを込めたバンド名なんだけど実際今の世に出てるバンドやらアーティストの大半がインフルエンサーが好きだって言うから とか コネクションだったりとかでしょ エンタメこそそういうものと全く無関係に動かないといけないんだけどどう思う？ ミコちゃん？」
え
「なんでわたし？」
「いやー この中で一番抱擁力がありそうな気がしたから ねえ みんな」
「「「「「「「『ミコちゃーん！』」」」」」」」」
「ええと」
「「「「「「「『うんうん』」」」」」」」」
ああ 固唾を飲むってこういう絵に描いたような状態のことなんだろうね
「ぜ 全部フリーにしたらどうかな なんて…」
あれ？
「「「「「「「「「元々ぜんぶそうだよぉっ！！！！！』」」」」」」」
「カンテンさん チョウノちゃん お久しぶりです」
「ミコちゃん 元気そうで何よりだわ」
「ミコチャン アイタカッタデス」
「ゲンム 朝ごはんぶり『何言ってんだここに来る電車の中でもずっと一緒だったろうが』まあまあ照れない照れない」
今日はハンディキャップを抱えるひとたちのバンド・スタンド みたいなWEBミーティングの日
ほんとはアパートの誰かの部屋でやってもよかったんだけど101号さん102号さん103号さんが毒気に当てられちゃうからね
なんの毒気かって？
そりゃあわたしの色香ですよ
「『何くだらない妄想してんだ アパートでできない理由はただひとつだろうが』」
WiFiがないから
仕方なくわたしたちは市民会館のカンファランス・ルームをレントしてON AIR する
英単語を並べ立ててミュージシャンぽくしようとしたけど最初の ‘市民会館’ ていう単語がすべてを打ち消しているよね
まあそれはそれとしてこの辺境の地の箱モノ公共施設であるカンファランス・ルームはねえ
もう最高！
防音仕様の部屋もいくつもあってわたしたちのような楽器を持ち込んで控えめではあるけれどもジャムるようなミーティングの団体には最適だよね
でも両隣の防音部屋から微かに聴こえてくるのは詩吟と民謡だけれどもね
「チョウノちゃん ここに来るまでの間男子に声かけられなかった？」
「？ イイエ トクニハ ア デモ」
チョウノちゃんはほんとうに不可解な顔をしているのは事実そういう対象とはならないと思ってるんだろうけどもね ちょっと心配になる答えが返ってきた
「コエハカケラレナイデスケド ワタシノウシロノケシキヲスマホでトッテルヒトハナンニンカイマシタ ハレテテヤマガキレイデシタカラ」
「チョウノちゃん 気をつけてね」
「エ？ ナニヲデスカ カンテンサン？…アア ワタシガケシキヲトルノノジャマニナラナイヨウニデスネ」
チョウノちゃんのこういう控えめなところこそが男子たちにはいいんだろうけど
「ゲンムこそ写真の邪魔にならないようにね『やかましい』」
せっかくなので事務局でプロジェクターを借りてきてプレゼン用のスクリーンに照射して会議に臨んだよ
「さあ準備OKよ」
4人してノートPCの前に並んで座ってカンテンさんがリーダーらしく口火を切ってくれた
「こんにちは 北の地方の 観ない 云わない 聴かない の三人娘と ミコちゃんズ です」
「こんにちは 東の地方の ガンズ・アンド・ホーズィズです」
ホーズィズなんていうから ガンズ・アンド・ローゼズとローリング・ストーンズの‘ワイルド・ホースィズ’から命名したのかと思ったら
法事ズだって
お寺の住職の跡取り息子と神社の神職の跡取り娘のふたりユニットで
「ハロー！ 愛してまぁす！ RCザクザクセッション です！ これで最後の曲になっちゃいました！」
清志郎さんを偏愛するRCサクセションのコピーバンド メイクは完璧だけれども体型は間に合わなかったみたいだしミーティングのキックオフなのに最後の曲だって
「どうも 南の地方の ヒヘホー・ハヒッフ・ホーヘフホハ です どうも」
イエロー・マジック・オーケストラのコピーバンドらしいけどたぶんこのバンド名だとなにがなんだかわからないと思うけど
「うぉぉおおいやーっはっはー！ Sexy・Beatlesどわうぉおおいやあ！ 西へ！西へ来ぉいぃぃやあ！」
ほとんど叱られないだろうかと思うバンド名だけどホンキ度から言えばこのひとたちが一番ホンキだと思う
ミーティングはうってかわって極めて実務的に進んだよ
「ミコちゃんズはさぁあ あごめん 長いからミコちゃんずって略すよね でさぁ ミコちゃんずはさあ やっぱその4人の個性？ もう誰がどうやったって真似できないその個性がさあ ストロングポイントだって思うわけぇ」
「僕ら深刻に神社仏閣で神仏を祀ることの将来に危機感を抱いてるんですよね ほら 御朱印とかパワースポットのブームで神社や寺院に訪れるひとは増えましたよ？ でも神社は神さまを祀るわけで本分は神様に奉仕して神事を行うことが本分なわけですよ だからその寄進？ 経営 ってドライに考えたら地元の氏子さんたちにご負担をおかけしてて
「寺院も同じなんですよね 結局は地元の檀家さんがそういう経営面を支えてくださってるわけで 実際問題檀家のおうちの若い方達が‘神も仏もない’って御朱印やパワースポットをアイコニック？ であってますか？ インフルエンサーさんがやたらと使いたがるアイコニック的な え？ ニックに的をつけると アイコン的的で重箱だって？ 知らんわなそんなことは」
「RCザクザクセッションのザクザクセッションはWEBやらSNSを通じて埋もれるバンドたちが世に出られるように 埋もれた秘宝のようなセッションをザクザク掘り出せるようにって願いを込めたバンド名なんだけど実際今の世に出てるバンドやらアーティストの大半がインフルエンサーが好きだって言うから とか コネクションだったりとかでしょ エンタメこそそういうものと全く無関係に動かないといけないんだけどどう思う？ ミコちゃん？」
え
「なんでわたし？」
「いやー この中で一番抱擁力がありそうな気がしたから ねえ みんな」
「「「「「「「『ミコちゃーん！』」」」」」」」」
「ええと」
「「「「「「「『うんうん』」」」」」」」」
ああ 固唾を飲むってこういう絵に描いたような状態のことなんだろうね
「ぜ 全部フリーにしたらどうかな なんて…」
あれ？
「「「「「「「「「元々ぜんぶそうだよぉっ！！！！！』」」」」」」」
