第64話 魔犬が遠吠える
文字数 1,045文字
リードはチェーン
しかもそのチェーンの端を持つのは犬の1/3ほどしかない躯体
幼女
「キャシー!」
母親の呼び声だろうか、どこかで観たシュチュエーションだけど、それでもわたしは見誤らなかった。
犬がキャシー
幼女はチェーンを自分の手首にジャリジャリジャジャ、と三巻き半しながら寝そべった。うつ伏せじゃなくて真横に。そうして呼びかける
「キャシー、good dog !」
トレーラーハウスの中では幼女の母親が車の躯体の窓横にある換気扇から煙と一緒に母親の声が響く。
英語ではない、⚡︎⚡︎⚡︎!というような発音の掛け声。多分促しているんじゃないか
『噛まれるな!』って
河川敷の裏の神社の横の公園から更に戻って河川敷の方へ歩いてきたところで見つけたこの黒のドーベルマンと幼女のパートナーシップはそれでもやっぱり『噛み殺されるんじゃ』っていう不安神経がわたしの病気の精神と合わさって極限になったよ。
でも、キャシーはそういう素振りはない。
「アレ?オネエチャン、ナニシテルノ?」
幼女はまるで超乃 ちゃんみたいな日本語で、でもそれは多分まだ幼稚園に行っているか行っていないかという年齢の幼女だから、きっと母親の使うまだ拙い日本語を真似てこんな喋り方になっているんだろう。わたしは彼女の微笑みには応じることはできないけど、質問に答えた。
「キャシーが吠えるのを待ってる」
「オネエチャン」
幼女は絶望的なことを言った。
「キャシーハホエナイノ。オトナシイノ」
わたしは年上だけれどもへりくだりへりくだり幼女に懇願した。
「わたしは負け犬なんだ。だから勝っている犬が吠えるのを聴きたい」
「キャシーハカッテモマケテモイナイヨ」
「それでもいいの」
幼女がどうやってキャシーに吠えさせるのか、それも見たかった。
「コウスルノ」
幼女はチェーンを自分の今度は手首ではなくて首に巻いた。そうして二巻きして、クロスさせていた手を横にそのまま引っ張った。
自分で自分の首を絞めた。
これが、『ごっこ』だとしたらどこまで力を込めたらホンキの度合いがキャシーに伝わるんだろうか。
それは杞憂だった。
幼女は自分のチェーンを自分のできる範囲の最大の筋力で締めにかかって、静かに伏せていたキャシーには視力が悪いとしても幼女の残像が写りチェーンの振動もキャシーに伝わってすぐに緊急事態だと判断してくれた。
短くじゃなくて長く吟ずるような声だった。
「うぉお・うぉん・おんおんぉぉ・・・」
キャシーの声は、鳴き声じゃなくて、泣き声みたいだった。
しかもそのチェーンの端を持つのは犬の1/3ほどしかない躯体
幼女
「キャシー!」
母親の呼び声だろうか、どこかで観たシュチュエーションだけど、それでもわたしは見誤らなかった。
犬がキャシー
幼女はチェーンを自分の手首にジャリジャリジャジャ、と三巻き半しながら寝そべった。うつ伏せじゃなくて真横に。そうして呼びかける
「キャシー、good dog !」
トレーラーハウスの中では幼女の母親が車の躯体の窓横にある換気扇から煙と一緒に母親の声が響く。
英語ではない、⚡︎⚡︎⚡︎!というような発音の掛け声。多分促しているんじゃないか
『噛まれるな!』って
河川敷の裏の神社の横の公園から更に戻って河川敷の方へ歩いてきたところで見つけたこの黒のドーベルマンと幼女のパートナーシップはそれでもやっぱり『噛み殺されるんじゃ』っていう不安神経がわたしの病気の精神と合わさって極限になったよ。
でも、キャシーはそういう素振りはない。
「アレ?オネエチャン、ナニシテルノ?」
幼女はまるで
「キャシーが吠えるのを待ってる」
「オネエチャン」
幼女は絶望的なことを言った。
「キャシーハホエナイノ。オトナシイノ」
わたしは年上だけれどもへりくだりへりくだり幼女に懇願した。
「わたしは負け犬なんだ。だから勝っている犬が吠えるのを聴きたい」
「キャシーハカッテモマケテモイナイヨ」
「それでもいいの」
幼女がどうやってキャシーに吠えさせるのか、それも見たかった。
「コウスルノ」
幼女はチェーンを自分の今度は手首ではなくて首に巻いた。そうして二巻きして、クロスさせていた手を横にそのまま引っ張った。
自分で自分の首を絞めた。
これが、『ごっこ』だとしたらどこまで力を込めたらホンキの度合いがキャシーに伝わるんだろうか。
それは杞憂だった。
幼女は自分のチェーンを自分のできる範囲の最大の筋力で締めにかかって、静かに伏せていたキャシーには視力が悪いとしても幼女の残像が写りチェーンの振動もキャシーに伝わってすぐに緊急事態だと判断してくれた。
短くじゃなくて長く吟ずるような声だった。
「うぉお・うぉん・おんおんぉぉ・・・」
キャシーの声は、鳴き声じゃなくて、泣き声みたいだった。