第206話 自動筆記

文字数 1,483文字

 降りてくる、っていう表現がエンタメの創作の場面でよく使われるよね

 わたしはでもそれは奇跡でもなんでもないと思う

 脳科学者は過去の体験や読み聴きしたものが記憶として残っていてそれが文字通りシナプス効果で繋がりあって形成されるものだっていう解説をしたくてしたくてウズウズしてるだろうけどそういうこととも違う

 ううん、仮にそうだったとしてもそもそもその脳神経をあなた造れるんですか?

 動物の細胞を利用して人間の治癒に働く医療用の細胞を作るだとかクローン技術にそれを使うだとか色々いってるけどそんなものは小手先の奇術でしかないよ

 わたしがあなたに訊いてるのは誰の発想も借りずにイチから構想してしかもその部品となる組織だとか粒子だとかいったレベルの単位のものを作ることができるのって訊いてるんだよ

 そうしてもしかしたらその粒子レベルのものだった可視範囲でこれが最小だとか言ってるだけであってもっと小さいものが寄り集まってるかもしれないよ?

 しかもそれらのものをなんらかの方法で崩れないように結びつけて一個の細胞の形にしてそれをさらに結びつけて臓器やら血管やら骨やらに生成してしかもそれを脳の働きで指揮命令系統を秩序だてて思考・行動させる

 そういうことをできて初めて『創造した』っていえるんじゃないの?

 だからまるで宇宙の起源を解明するみたいなことを言ってるのはペテン師とまでは言わないけどカネ集めのためのプロモーション用の言い草だよ

 お日さまもお月さまも決して単なる学問上の天体などではありえない

 それなのに月の開発をしようなんていうひとたちのそれは悪魔の所業としか言えない

 神仏を一切恐れない逆神のおこないだよほんとに

 たった5歳のわたしがここまで言うのはシャムが過去世において何代にもわたって書き続けてきたその小説のすべてを『ねじ込まれた』からだよ

 これをも過去に体験したことの記憶だとか潜在意識の所産だとか言うのなら言っててもいいよ

 所詮現時点での科学が到達してるのはその程度のことで、ほんとうの意味でのブレイクオンスルーをしようとしたら、内なる部分からそれを生み出したほんとうの根本を認めないわけにいかないのに

 認めないから科学の進歩はそこで止まってる

 ううん止まってるんじゃない

 終わってるんだよあなたたちは

 シャムは恩人の自動筆記で小説を書いていた

 それは決して奇跡でもなんでもない

 恩人のココロに身を任せた結果だよ

 奇跡なんか長続きしない

 当たり前のことを当たり前に積み重ねて、何回も何回も嫌になるぐらいに地味な『ならぬかんにん』を積み上げることこそがほんとのことを書く唯一の方法なんだよ

 シャムは恩人が既にして教えてくれていた到底人間の浅瀬ちゃわちゃわの知恵や知識では把握できない、けれども奇跡でもなんでもない当たり前の事実を知り得ただけの話

 それって誰でも知り得るのに臭いものに蓋をしたり、棚上げして先延ばししたりして触れたくないから触れずにいるだけの話

 介護が必要な身となることが分かりきっているのに『将来的な話さ』と言ってどうにもならなくなった最後の最後に敢えて逃げることのできない『ならぬかんにん』をするいわば逃げ遅れた介護者に全部放り投げるだけの話

 そうでないのならばとっくの昔に

 テロや戦争を引き起こすわがままな人間は改心してるはずだもん

 あなたたちは、デイサービスやショートステイや老健施設に入所するのを『まだ大丈夫だ 将来的な話だ』と既に老人である自分を棚上げしている認知症の老人と同じ

 でもならぬかんにんを教わっていたシャムは

 捨てないんだ
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