第123話 Broken Communication Feel so Good
文字数 1,271文字
なんと今日宿を取った民宿にはWiFiがなかったのでモヤとふたりでスーパーのイートインに来た。
フリーWiFiがあるし高知という場所の外の空気にできるだけ触れていたかったし。
「ごめんね、モヤ。大事な業務用のPC使わせちゃって」
「ううん、平気。このノートPCは確定申告の時と趣味の作業にしか使わないから」
そう言ってモヤはいわゆるマシンというものには少なからずこだわりがあるのだろう、かなりハイスペックなPCを地元の女子中学生たちがペットボトル1本でテスト勉強のために集まってうんうん唸ってる隣のテーブルに置いてスタンバイした。
ちなみにモヤの趣味とは過去現在のクーペの精密画を描くこと。
「こっちが招待される側だから」
そう言ってわたしはモヤのアドレス宛メールで送ってもらっていた招待用のURLからミーティング・ルームに入っていった。
ZOOMを使ってのオンラインミーティング
「シャム!」
「ゲンム!」
わたしとゲンムはお互いの元気そうな顔を観て嬉しくなって手話で名前を呼び合った。
「シャムちゃん」
「シャムサン」
「カンテンさん、チョウノちゃん」
観ザル:観点(カンテン)さん
言わザル:言夢(ゲンム)
聴かザル:超乃(チョウノ)ちゃん
わたしの懐かしいおサルさん三人娘
四国に来てからそんなに日数が経ってるはずじゃないのにもう何ヶ月も時が過ぎたような気がする。
お遍路さん効果かもしれない。
「こんばんは。モヤって言います」
わたしは手話の同時通訳もして聴覚の無いチョウノちゃんにも話しかける。
同時にモヤのために音声を発しないゲンムの手話も同時通訳する。
「よう、モヤ、シャムと乳繰り合ってるか?」
「!?」
「あ、ごめん、モヤ。要は『こんにちは、モヤ、シャムと仲良くしてくれてる?』ってことなんだけどゲンムはこういう感じの言い方するから」
「手話なのに!?」
3分と経たない内に全員がお互いの本性を晒け出して乳繰り合った(仲良くし合った)
だって、今世はすごく短い
「モヤちゃん」
「はい、カンテンさん」
「シャムをよろしくね」
「はい」
「モヤサン」
「うん、チョウノちゃん」
「シャムサンニクドクヲ」
「うん。わたしもシャムと一緒に功徳を積ませていただくよ」
「モヤ」
わたしがモヤに呼びかけるゲンムの手話の同時通訳を、モヤはそこでさえぎった
「モヤ。いいの?」
「うん、いいよシャム。ありがとう。多分、わかるから」
そうしてゲンムとモヤは一対一で、ふたりだけの『会話』をした
それはジェスチャーというものでもなく、目で通じ合うというわけでもなく、耳でも、口でもない、なんだかよくわからないけれどもわかってしまう、全く新しいコミュニケーションツールのやりとりだって思ったよ
ううん、ツールなんて言い方は過小かな
コミュニケーションのすべてかもしれない
ミーティングが終わった後でモヤに訊いたよ
「モヤ。ゲンムはなんて?」
「シャムを大切にしてくれるモヤだからモヤのことも大切だ、って」
「そう」
モヤがゲンムに何て伝えたかももうわたしは訊くまでもなかった
わたしもわかったから
フリーWiFiがあるし高知という場所の外の空気にできるだけ触れていたかったし。
「ごめんね、モヤ。大事な業務用のPC使わせちゃって」
「ううん、平気。このノートPCは確定申告の時と趣味の作業にしか使わないから」
そう言ってモヤはいわゆるマシンというものには少なからずこだわりがあるのだろう、かなりハイスペックなPCを地元の女子中学生たちがペットボトル1本でテスト勉強のために集まってうんうん唸ってる隣のテーブルに置いてスタンバイした。
ちなみにモヤの趣味とは過去現在のクーペの精密画を描くこと。
「こっちが招待される側だから」
そう言ってわたしはモヤのアドレス宛メールで送ってもらっていた招待用のURLからミーティング・ルームに入っていった。
ZOOMを使ってのオンラインミーティング
「シャム!」
「ゲンム!」
わたしとゲンムはお互いの元気そうな顔を観て嬉しくなって手話で名前を呼び合った。
「シャムちゃん」
「シャムサン」
「カンテンさん、チョウノちゃん」
観ザル:観点(カンテン)さん
言わザル:言夢(ゲンム)
聴かザル:超乃(チョウノ)ちゃん
わたしの懐かしいおサルさん三人娘
四国に来てからそんなに日数が経ってるはずじゃないのにもう何ヶ月も時が過ぎたような気がする。
お遍路さん効果かもしれない。
「こんばんは。モヤって言います」
わたしは手話の同時通訳もして聴覚の無いチョウノちゃんにも話しかける。
同時にモヤのために音声を発しないゲンムの手話も同時通訳する。
「よう、モヤ、シャムと乳繰り合ってるか?」
「!?」
「あ、ごめん、モヤ。要は『こんにちは、モヤ、シャムと仲良くしてくれてる?』ってことなんだけどゲンムはこういう感じの言い方するから」
「手話なのに!?」
3分と経たない内に全員がお互いの本性を晒け出して乳繰り合った(仲良くし合った)
だって、今世はすごく短い
「モヤちゃん」
「はい、カンテンさん」
「シャムをよろしくね」
「はい」
「モヤサン」
「うん、チョウノちゃん」
「シャムサンニクドクヲ」
「うん。わたしもシャムと一緒に功徳を積ませていただくよ」
「モヤ」
わたしがモヤに呼びかけるゲンムの手話の同時通訳を、モヤはそこでさえぎった
「モヤ。いいの?」
「うん、いいよシャム。ありがとう。多分、わかるから」
そうしてゲンムとモヤは一対一で、ふたりだけの『会話』をした
それはジェスチャーというものでもなく、目で通じ合うというわけでもなく、耳でも、口でもない、なんだかよくわからないけれどもわかってしまう、全く新しいコミュニケーションツールのやりとりだって思ったよ
ううん、ツールなんて言い方は過小かな
コミュニケーションのすべてかもしれない
ミーティングが終わった後でモヤに訊いたよ
「モヤ。ゲンムはなんて?」
「シャムを大切にしてくれるモヤだからモヤのことも大切だ、って」
「そう」
モヤがゲンムに何て伝えたかももうわたしは訊くまでもなかった
わたしもわかったから