第272話 学とまことの対決
文字数 1,331文字
ほんとうは今日はもうやめるつもりだったのだけれどもやらないわけにはいかなくなった
学者である時点でダメだ ということをいわねばならない
『ミコ ミコがそんなに血相変えて真剣になるなんてめずらしいな』
「いわなきゃ国が潰れるから」
『日本がか』
「ちがうよ 神さまの国が だよ」
ずっと前から思っていた
シャムはね
シャムのココロに触れてわたしもそう思った
ほんとうの現実の世界というのは今で言えば神社仏閣の中にこそあるのであってそれをわざわざ結界を張って仕切ってしまっている
なぜか
自分の思うように好き勝手やりたいからだよ
人間が
「世界観 なんてものは自己都合」
『ミコ わたしはミコがただの5歳児じゃないってことを知ってるから驚かないけど‘自己都合’なんて言葉普通は使わないぞ』
「もう普通じゃいられないから 学者はどこまで行っても‘学’に縛られてそれだけじゃなくて他人をも‘学’で縛ろうとする わかるよね」
『ああ ‘学’を世界観としこの世の真実のように見せかければそれだけで自分の株が上がる』
「でも本質はそこじゃないよ ゲンム」
『うん わかってる』
否定したいのだ
神さまを
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わたしとゲンムは新幹線で京都へ向かった
京都が牙城だから
知や学の冥府の
「すみません A教授おられますか」
「ええとあなただれ」
「孫です」
孫が学校に来るかどうかなど問題なのではなく万が一わたしがほんとうの孫でA教授の身内に無礼を働いたとしたらとてつもなく不利な状況が待ち構えることとなるのだろう
大学職員としての職を喪失するほどの
学生たちは研究棟の廊下を歩くゲンムとわたしを観てちょっとだけ好奇の目をするけれどもそれ以上の興味は示さない
知と学で世の中なんとかなると思ってるから
はたしてA教授は大学院生たちの指導をしている真っ最中だった
「こんにちは」
「こんにちは…ええと…」
「ご意見申し上げに参りました」
丁寧にお茶を勧めてくれた
それも自分で淹れて
「教授 警告を発せられるのはとてもよきことと思います けれども発するならばほんとうのことを」
「私の論文が間違いだと?」
「いいえ 間違いかどうかなどこのわたしごときがわかろうはずがありません ただまだまだ甘っちょろいということだけは言わねばなりません」
この教授はいいセン行ってると思うよ
だって5歳のわたしの喋ることをまともに聴いてくれてる
だから惜しい
「学や知に走るのはそれを持って神様の上に昇りたいからでしょう」
「否定はしません。でもそれだけじゃない。人間とはとても素晴らしいものだということを私は科学を通じて訴えなくてはならぬのです。科学で人類を救いたいんです」
「教授 それがそもそも無理なのです」
偈でもってわたしは補足したよ
歌でもってわたしはおぎなったよ
知や学を 神とも崇め
その実は 自分を崇め
結末は 他人を落とす
敵とうと 定めをつけし
雨あられ フラレにフラレ
地べたをば 固めしはずが
さらにドロドロ
泥海のまま
やれるならやりてみなされホトトギス
学で生き 死ぬるも学の最上位
いつになりたらまことに目覚む
「教授」
「はい」
「はやくまことのココロになってください」
学者である時点でダメだ ということをいわねばならない
『ミコ ミコがそんなに血相変えて真剣になるなんてめずらしいな』
「いわなきゃ国が潰れるから」
『日本がか』
「ちがうよ 神さまの国が だよ」
ずっと前から思っていた
シャムはね
シャムのココロに触れてわたしもそう思った
ほんとうの現実の世界というのは今で言えば神社仏閣の中にこそあるのであってそれをわざわざ結界を張って仕切ってしまっている
なぜか
自分の思うように好き勝手やりたいからだよ
人間が
「世界観 なんてものは自己都合」
『ミコ わたしはミコがただの5歳児じゃないってことを知ってるから驚かないけど‘自己都合’なんて言葉普通は使わないぞ』
「もう普通じゃいられないから 学者はどこまで行っても‘学’に縛られてそれだけじゃなくて他人をも‘学’で縛ろうとする わかるよね」
『ああ ‘学’を世界観としこの世の真実のように見せかければそれだけで自分の株が上がる』
「でも本質はそこじゃないよ ゲンム」
『うん わかってる』
否定したいのだ
神さまを
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わたしとゲンムは新幹線で京都へ向かった
京都が牙城だから
知や学の冥府の
「すみません A教授おられますか」
「ええとあなただれ」
「孫です」
孫が学校に来るかどうかなど問題なのではなく万が一わたしがほんとうの孫でA教授の身内に無礼を働いたとしたらとてつもなく不利な状況が待ち構えることとなるのだろう
大学職員としての職を喪失するほどの
学生たちは研究棟の廊下を歩くゲンムとわたしを観てちょっとだけ好奇の目をするけれどもそれ以上の興味は示さない
知と学で世の中なんとかなると思ってるから
はたしてA教授は大学院生たちの指導をしている真っ最中だった
「こんにちは」
「こんにちは…ええと…」
「ご意見申し上げに参りました」
丁寧にお茶を勧めてくれた
それも自分で淹れて
「教授 警告を発せられるのはとてもよきことと思います けれども発するならばほんとうのことを」
「私の論文が間違いだと?」
「いいえ 間違いかどうかなどこのわたしごときがわかろうはずがありません ただまだまだ甘っちょろいということだけは言わねばなりません」
この教授はいいセン行ってると思うよ
だって5歳のわたしの喋ることをまともに聴いてくれてる
だから惜しい
「学や知に走るのはそれを持って神様の上に昇りたいからでしょう」
「否定はしません。でもそれだけじゃない。人間とはとても素晴らしいものだということを私は科学を通じて訴えなくてはならぬのです。科学で人類を救いたいんです」
「教授 それがそもそも無理なのです」
偈でもってわたしは補足したよ
歌でもってわたしはおぎなったよ
知や学を 神とも崇め
その実は 自分を崇め
結末は 他人を落とす
敵とうと 定めをつけし
雨あられ フラレにフラレ
地べたをば 固めしはずが
さらにドロドロ
泥海のまま
やれるならやりてみなされホトトギス
学で生き 死ぬるも学の最上位
いつになりたらまことに目覚む
「教授」
「はい」
「はやくまことのココロになってください」