第191話 君臣睦まじき時国盛える
文字数 1,082文字
果たして、ミコが言った
えっ
「君臣の秩序乱すべからず かつての聖賢豪傑の僧の方々は‘ほんとうのこと’を胸に抱いて弱き衆生のひとたちを救おうと、もしその時々の治世がなっていないのならば時に懸命なあまり激しい言葉を用いて仏心を説こうとなさった だけれどもきわめて重要なことは」
これはシャムが乗り移っているわけではない
あくまでもミコの言葉だ
強いて言うならば
シャムとミコは一骨分身にして別あるにあらず、だ
「…きわめて重要なことは、彼らは『国法に従った』ことだ 讒言による罪なき罪であったとしても、ひとたび沙汰が降ったならば、それを命懸けで守ったことだ 文字通りだ 法然上人も流刑となり親鸞聖人も流刑となり、甘んじてそれを受け、決して慌てふためくことがなかった 日本の国柄を見事にわきまえ、淡々と日々の勤めを果たした しかるに今世の聖賢を騙る似非聖者たちはどうしたことか 讒言による罪なき罪でも甘んじて受けるどころか、その根元となるはずの国法の方を変えようとする 自らが服すことを潔しとしないものどもが自己の罪を認める代わりに国法の方を変えてしまおうとする 本末転倒も甚だしい 何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返ていうけど、聖徳太子さまの十七条の憲法に帰るのであれば改憲は賛成だ 日本という国の‘君臣の秩序’もわきまえずあたかも自己が最も優遇されるべき‘筆頭国民’のような感覚でいるのだとしたら、それはもうわたしのどうこうできる状態じゃない」
「シャ、シャム!」
「われはシャムにあらず仏にあらず 仏にあらずというはわれはどこまでも神仏のフォロワーであるという意味なり そしてただシャムの遺志を継ぎこの四国の西国八十八番をめぐりめぐりてなにごとか国によく、世界によく、さらには大日如来さまが統括なさる大宇宙によきことをなすべく参った女子なり!」
年齢など関係ない
真に敬するべき存在ならば
女子だろうと
男子だろうと
若かろうが
ヨボヨボだろうが
病気だろうが
目がみえようがみえまいが
口がきけようがきけまいが
耳がきこえようがきこえまいが
委細一切かんけいなし
あなただろうが
わたしだろうが
虫だろうが
獣だろうが
鳥だろうが
花だろうが
塵芥だろうが
ほら、覚えてるよね?
ずっと子供のころに初めて連れていってもらった映画館で
初めてスクリーンで観た映画そのものに感動しただけでなくって
映写機から太陽光線のように真っ直ぐな光が闇を貫き通して
その光線の筒の中にうかんでいるホコリやかすかに観える風の流れに
泣きたいぐらいに感動したことを
覚えてるよね?
えっ
「君臣の秩序乱すべからず かつての聖賢豪傑の僧の方々は‘ほんとうのこと’を胸に抱いて弱き衆生のひとたちを救おうと、もしその時々の治世がなっていないのならば時に懸命なあまり激しい言葉を用いて仏心を説こうとなさった だけれどもきわめて重要なことは」
これはシャムが乗り移っているわけではない
あくまでもミコの言葉だ
強いて言うならば
シャムとミコは一骨分身にして別あるにあらず、だ
「…きわめて重要なことは、彼らは『国法に従った』ことだ 讒言による罪なき罪であったとしても、ひとたび沙汰が降ったならば、それを命懸けで守ったことだ 文字通りだ 法然上人も流刑となり親鸞聖人も流刑となり、甘んじてそれを受け、決して慌てふためくことがなかった 日本の国柄を見事にわきまえ、淡々と日々の勤めを果たした しかるに今世の聖賢を騙る似非聖者たちはどうしたことか 讒言による罪なき罪でも甘んじて受けるどころか、その根元となるはずの国法の方を変えようとする 自らが服すことを潔しとしないものどもが自己の罪を認める代わりに国法の方を変えてしまおうとする 本末転倒も甚だしい 何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返ていうけど、聖徳太子さまの十七条の憲法に帰るのであれば改憲は賛成だ 日本という国の‘君臣の秩序’もわきまえずあたかも自己が最も優遇されるべき‘筆頭国民’のような感覚でいるのだとしたら、それはもうわたしのどうこうできる状態じゃない」
「シャ、シャム!」
「われはシャムにあらず仏にあらず 仏にあらずというはわれはどこまでも神仏のフォロワーであるという意味なり そしてただシャムの遺志を継ぎこの四国の西国八十八番をめぐりめぐりてなにごとか国によく、世界によく、さらには大日如来さまが統括なさる大宇宙によきことをなすべく参った女子なり!」
年齢など関係ない
真に敬するべき存在ならば
女子だろうと
男子だろうと
若かろうが
ヨボヨボだろうが
病気だろうが
目がみえようがみえまいが
口がきけようがきけまいが
耳がきこえようがきこえまいが
委細一切かんけいなし
あなただろうが
わたしだろうが
虫だろうが
獣だろうが
鳥だろうが
花だろうが
塵芥だろうが
ほら、覚えてるよね?
ずっと子供のころに初めて連れていってもらった映画館で
初めてスクリーンで観た映画そのものに感動しただけでなくって
映写機から太陽光線のように真っ直ぐな光が闇を貫き通して
その光線の筒の中にうかんでいるホコリやかすかに観える風の流れに
泣きたいぐらいに感動したことを
覚えてるよね?