第247話 嫉妬shit!

文字数 1,267文字

 めずらしくゲンムが難しい顔してる

 ううん 不機嫌そうな顔は常時だけれど なにか根本のことを思い詰めてるみたいな

 なんだろ

「なんだろ」
『なんだろ? なんだもアナコンダもないだろう』
「やっぱりおかしいよ ゲンムが自分からブリザード級のダジャレを言うなんて」
『なあミコ わたしたちは四国八十八か所を参って結願したよな』
「うん 間違いなく」
『きわめて困難な旅路だったよな』
「そうだね」
『途中でシャムが 死んだ』
「うん その後継がわたし…あ わたしじゃやっぱり満たされない?」

 しおらしく半泣きのマネ顔をしてみる

『ち ちがうちがう! ミコはなにも悪くない』

 わ

 わたしのおふざけもマトモに受け取ってるから相当ひどいね

「ねえゲンム どうしたのどうしたいの あギャグじゃないからね」
『どうしてシャムは死んでそれを誰も知らなくて あの映画監督は数百万人どころか数千万人数億人に知られてるんだ』

 あ
 そういうことなんだね

「ゲンム ゲンムが嫉妬してるの?」
『わたしは別に嫉妬なんか』
「ものすごくよくわかるよ」
『え』

 意外でしょ

 でもこれは故なきことじゃない

 だってほうっておいたら大変なことになるから

「ゲンム そもそも受け入れられてることっていいことなの?」
『? 受け入れられないよりはいいんじゃないか?』
「ゲンム じゃあどうしてお不動さまは奴僕の行をなさってるの?」
『?』
「お不動さまはどうして悪のココロを縄で縛り付けて剣で断ち切ってまでひとを改心させるようなひとに嫌われることをおやりになるの?」
『お不動さまは嫌われてもいないだろうし受け入れられてるだろう 道におわしたりお堂におわしたりなさるお不動さまをみんな慕い帰依しているだろう?』
「ゲンム 人間は容れ物の底が浅いよ」

 ねえ もしも

 容姿端麗 ココロよし

 頭もよしで 家もよし

 すべて満足 満ち足りた

 お大尽さま にこにこと

 それやろこれやろすべてやろ

 大盤振る舞い気狂いの

 贅沢三昧尽くしたる

 そのひとあなたを呼び止めて

 そちとら改心しやがれと

 ヘラヘラ笑いて口説いたら

 誰が言うこときくものか

 我が身我が肌真っ青に

 染めし修行は罪穢れ

 負いたるひとのココロをぞ

 あわれかわいや晴らすぞと

 縄もて縛り剣で討ち

 討たるる間際の脳裏には

 お不動さまさえ身をやつし

 我が身を堕とす修行をば

 常住坐臥とて安らかに

 こなすからこそわれわれの

 怒りを鎮め嫉妬をも

 消し去り溶かし罪穢れ

 そんなものなどあったかい

 あらあったかいあったかい

 改心したその瞬間に

 雪溶け蒸気となりなりて

 白雲青空覆いつつ

 慈悲の雨をば降らしたる

 観よやこの雨悪人の

 改心せし雲ふらしたる

 めでたや旱魃いつの間や

 大地に緑が満ちみつる

 緑さえやる地平線

 お不動さまのお慈悲よと

 討たれた悪人こうべ垂れ

 我が身改心せし雲の

 慈雨をぞうなじに受け止める



『ミコ わかったよ シャムは誰にも知られずとも誰よりも善をなしたと なあミコそれでもやっぱり教えてくれ』
「うんいいよ」
『奴僕の行をせずして受け入れられてる奴は』
「だましてるだけ」
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