第281話 地観よ森観よ

文字数 805文字

 自分がぞんざいに扱われていると感じたとき

 大地を観よってシャムの感性がささやく

 自分がずっと浮上できないと感じたとき

 森を観よってシャムの感性がささやく

 景色として綺麗だっていうことももちろんあるのだけれども

 それともまた違う感覚をシャムは与えてくれる

「ゲンムの方からハイキングに誘ってくれるなんて」
『時折無性に自然を感じたくなるんだ』

 何か特別なことが起きるわけじゃない

 ただただ里山のふもとから登り始めて頂上を目指して林の中から森の中を歩くだけ

 苔が青い

 それからどうしてお土が茶色なのかを考えたとき 椿の花が落ちているところを思い出してみた

 花びらもガクも葉もだんだんと端の縁の方から茶色くなっていく

 もちろん花だけでお土ができているわけじゃなくて鉱石が微細に砕けたものや虫の死骸や土と共に生きしている微生物や

 それらのすべてが合わさってお土となっているけれどもこんなに緻密で繊細でなおかつ力強いこのお土は

 神さまそのものなんだろうな って感じる

『ミコ 頂上だよ』

 ゲンムが声をかけてくれたおかげで乳酸の溜まり切ったあんよだけれどももうひとふんばりできた

「わあ!」

 こういう無邪気な感嘆の声をあげるときにわたしは自分の肉体が5歳であることをようやく思い出す

 森の中の木で言えば幼木とでもいうのだろうか

 けれどもその幼木たるわたしの年輪が5歳だとしたら一年でサイクルを終える草たちはわたしの後輩ということかな

 でもちょっとまって

 草は確かに一年でサイクルを終えるけれどもその根はお土の中でまだ生きてるかもしれない

 それどころか朽ちた草の体がまたお土となって森や林の中で生きている鳥獣虫草木花たちに大功徳をなしている

 それだけでない

 お土は治水をおこない海を清らかにし草木たちはその養分から光合成を行って鳥獣虫だけでなく人間さえも生かしてくれるだけの酸素を供給してくれる

 なんという仕組み

 ゲンム

「海だ!」
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