第203話 ご神木は補給基地

文字数 778文字

 第八十五番札所 五剣山 観自在院 八栗寺

 さぬき三大天狗のおひとかた 中将坊さまが祀られている

 夜に山から降りてこられてひとのためによいことをしてくださって朝にまたお帰りになる天狗さま

 シャムがエピソードのひとつとしてご神木から天地のエネルギーを補給なさって大活躍をなさる山の神さまのことを小説に書いて公募に応募したら0点だった

 講評が、ゼロであったと

 書き添えには陳腐であると

 好きな作家を決めてそういう作家の文章を読みて真似ていけと

 そもそもシャムはマーケットに流通する小説を買って読むことも図書館で借りて読むこともできないもん

 陳腐、っていうのはうそっぱちの小説ばかり読んでいるから擬音が『グゥおわー〜ーー』とかやたらと『過酷』っていう言い回しをしたりとか、ほんとうのことで書けば静かにけれども鋭く書くしかないところを大袈裟に大袈裟に嘘に嘘を上塗りして書いて結局自分が老いて世に無用のような言い方をされて、いわば総活躍という概念だから表面上活躍していない年寄りは要らぬと番頭さまが言ったのと同様なことになっていてもシャムはそんなひとたちの言うことじゃなくてシャムの恩人の

『愚かなわたしが筆を染め造りし歌であるけれど』

というこの文言にまこととほんとうとホンモノを観たからねえ

 びくともしないって

 だからわたしたちも言おうか

「ほら、モヤ、ゲンム」
「気がすすまないな」
「『わたしも今ひとつだけどシャムのためなら』ってゲンム ありがとう」

 わたしたちは中将坊さまに向かって手を合わせて少し大きい声を出した

『「「我ら中二病にあらず ただあなたさまの大功徳に感じ入るものなり 願わくはわれらにもあなたさまのお手伝いを! 世直しのお手伝いを!」」』

 さて目を閉じて耳をすますわれら

 !!!

「聴こえた!?」
「『ああ』うん、聴こえた!」

 
 うわあっはっはっはあーっ!
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