第246話 ふたりで映画でも観よっか
文字数 1,370文字
「ゲンム シャムが中学生の男の子とデートした時の記憶が突然蘇ったんだけど」
『で?』
「ふたりでデートしない?」
正確にはシャムが観に行った映画館にたまたまその男の子が居てその男の子は友達と一緒に観に来てたんだけども他の子たちがエンドロールの最中にみんな出てったのにその子だけ残ってて
涙を流してたからシャムとその子が映画についてカフェで語り合うという
「わたしもゲンムとそういうのやってみたい」
『幼稚園のヤモリ組の男子と一緒に観に行けばいいだろ』
「えー? 幼稚園児がふたりで映画館にはいれないよ それともなに? デートに父兄同伴で行けとでも?」
論旨が本末転倒でズレてるのをわかりながらもわたしはゲンムを押し切った
『ガラガラだな』
「うん すごい評判悪い映画だから」
しかもわたしのチョイスで観る映画を決めさせてもらった
シネコンて露骨に他の映画との比較をその場の雰囲気だけで決めちゃったりするよね
まさしく木を観て森を観ず? 意味が合ってるかどうかはわかんないけど
「あ この映画はPG12なのですが」
「『わたしがこの子の保護者です』と彼女は申しております」
保護者の定義ってなんだろ
「いやー ワクワクするねー」
『これって恋愛映画だろ?』
「だからお子様には保護者の助言が必要なんじゃないの?」
『少女向けのアニメとかにしといたらどうなんだよ』
「少女って何歳?」
『じゃあ幼女向けで』
「幼女って何歳?」
ゲンムとわたしの不毛な音声と手話でのやりとりをガラガラのシートの中、近日上映の予告編が流れ始めた
「あ これ観たい」
『お子様にはまだ早い』
ホラー
「ね ゲンム これは?これは?」
『教育上よくない』
異世界転生のアニメ
「うわー このワンちゃんかわいー」
『動物虐待だ』
眠そうになっている子犬に無理やりエサを与えてその子犬が獣の本性を出してガツガツと目を覚まして餌をむさぼる映像
本編が始まったよ
以下 わたしとゲンムのモノローグ・・・・・・
「あ 手をつないだ!」
『インフルエンザの季節なのに意識ないな』
「わ ハグしてる!」
『邪な気持ちがまるわかりだな』
「あー とうとうクライマックスだから やっぱりキスするよねー」
『鼻をよけるのに眼を開けたまま確認してからやってるな どうでもいいけど』
エンドロール
わたしはやっぱり映画でこういう雰囲気になるのはたまにはいいもんだなって余韻に浸る
ゲンムはなんだかよくわかんないけど腕組みなんかしちゃってる
粗暴に観えるゲンムも腕組みすることはそうそうないのに
「じゃあカフェで映画の感想談義しようよ」
これも無理やりゲンムに押し切ってわたしたちはパスタの美味しい喫茶店でゲンムはアイスティー わたしはホットココアをたのんだ
「ゲンム ゲンム あの主人公の男の子ちょっとよくなかった?」
『…』
「ゲンム やっぱり恋愛映画はふたりの触れ合いが醍醐味だよねー」
『…』
「ゲンムぅ そんなにあの映画嫌だった?」
『映画そのものはどうってことない 幼稚園児のミコが観ても特に人生に悪影響を及ぼすこともなければ際立って得るものもない人畜無害の映画だった』
「じゃあなにを怒ってるの?」
ゲンムは一旦うつむいてね
それでこう言ったよ
『主人公の男子の方が名前呼んでた同級生のやつら 誰ひとりとしてエンドロールのクレジットの中に載ってなかった』
『で?』
「ふたりでデートしない?」
正確にはシャムが観に行った映画館にたまたまその男の子が居てその男の子は友達と一緒に観に来てたんだけども他の子たちがエンドロールの最中にみんな出てったのにその子だけ残ってて
涙を流してたからシャムとその子が映画についてカフェで語り合うという
「わたしもゲンムとそういうのやってみたい」
『幼稚園のヤモリ組の男子と一緒に観に行けばいいだろ』
「えー? 幼稚園児がふたりで映画館にはいれないよ それともなに? デートに父兄同伴で行けとでも?」
論旨が本末転倒でズレてるのをわかりながらもわたしはゲンムを押し切った
『ガラガラだな』
「うん すごい評判悪い映画だから」
しかもわたしのチョイスで観る映画を決めさせてもらった
シネコンて露骨に他の映画との比較をその場の雰囲気だけで決めちゃったりするよね
まさしく木を観て森を観ず? 意味が合ってるかどうかはわかんないけど
「あ この映画はPG12なのですが」
「『わたしがこの子の保護者です』と彼女は申しております」
保護者の定義ってなんだろ
「いやー ワクワクするねー」
『これって恋愛映画だろ?』
「だからお子様には保護者の助言が必要なんじゃないの?」
『少女向けのアニメとかにしといたらどうなんだよ』
「少女って何歳?」
『じゃあ幼女向けで』
「幼女って何歳?」
ゲンムとわたしの不毛な音声と手話でのやりとりをガラガラのシートの中、近日上映の予告編が流れ始めた
「あ これ観たい」
『お子様にはまだ早い』
ホラー
「ね ゲンム これは?これは?」
『教育上よくない』
異世界転生のアニメ
「うわー このワンちゃんかわいー」
『動物虐待だ』
眠そうになっている子犬に無理やりエサを与えてその子犬が獣の本性を出してガツガツと目を覚まして餌をむさぼる映像
本編が始まったよ
以下 わたしとゲンムのモノローグ・・・・・・
「あ 手をつないだ!」
『インフルエンザの季節なのに意識ないな』
「わ ハグしてる!」
『邪な気持ちがまるわかりだな』
「あー とうとうクライマックスだから やっぱりキスするよねー」
『鼻をよけるのに眼を開けたまま確認してからやってるな どうでもいいけど』
エンドロール
わたしはやっぱり映画でこういう雰囲気になるのはたまにはいいもんだなって余韻に浸る
ゲンムはなんだかよくわかんないけど腕組みなんかしちゃってる
粗暴に観えるゲンムも腕組みすることはそうそうないのに
「じゃあカフェで映画の感想談義しようよ」
これも無理やりゲンムに押し切ってわたしたちはパスタの美味しい喫茶店でゲンムはアイスティー わたしはホットココアをたのんだ
「ゲンム ゲンム あの主人公の男の子ちょっとよくなかった?」
『…』
「ゲンム やっぱり恋愛映画はふたりの触れ合いが醍醐味だよねー」
『…』
「ゲンムぅ そんなにあの映画嫌だった?」
『映画そのものはどうってことない 幼稚園児のミコが観ても特に人生に悪影響を及ぼすこともなければ際立って得るものもない人畜無害の映画だった』
「じゃあなにを怒ってるの?」
ゲンムは一旦うつむいてね
それでこう言ったよ
『主人公の男子の方が名前呼んでた同級生のやつら 誰ひとりとしてエンドロールのクレジットの中に載ってなかった』