第48話 朝が辛いんだよね

文字数 839文字

 アパートの16畳の部屋の真ん中にゆったりと敷いた布団で朝、っていうよりは早朝に目覚めちゃうんだよね。

 そして、呻くよ。

「ああ・あ」

 ってね。

 時計を見たら03:00とか04:00とか。青果市場とか魚市場とかで働いてる人だったらそれぐらいの早い時間にはもう仕事してるんだろうけどわたしの場合は仕事はしてないけど疲れ果ててる。

 01:00に寝ても03:00に目が覚めるし02:00ならば04:00って感じだから。

 こめかみとかをマッサージしてみるけどダメだね。ますます疲れを意識しちゃう。
 そのまま布団の中で出勤のタイムリミットまでうにょうにょしてるのが一番多いパターンだけど今日はそれでも耐え切れないぐらい辛くて一階に降りてみた。

「うああっ!」
「そうかそうか」

 101号さんの叫び声と大家さんがそれを宥める声が聞こえる。
 101号さんの次は102号さん、その次は103号さんと、大家さんは一階の男子全員を深夜に宥め続けている。

「おや、捨無(シャム)ちゃん。眠れないのかい?」
「はい・・・・・・大家さんこそ、毎晩こんなんで眠れてるんですか?」
「ははは。わたしゃあ昼寝でもすればよいからね。それよりシャムちゃん、辛いのかい?」
「は、はい・・・・・・いいえ」
「辛いんだろう?」
「・・・・・・・・・はい」

 気がついたらわたしは泣いてたみたいだ。

 台所のテーブルにわたしを座らせてくれて、昆布茶をトン、と置いてくれた。

「お飲み」
「はい・・・・・・・」

 寝汗をかいていたわたしのカラダに、昆布茶の塩味が染みていくみたい。

「どうれ」

 そう大家さんは言って、節のある、思ったよりもとても大きい掌でわたしの背中を、パジャマの上から撫でてくれた。

「よしよし」
「うっ、うっ、うっ・・・・・」
「そうかそうか、よしよし」

 大家さんが何度も何度も繰り返して撫でてくれるその手の節と、シワのある指の腹や掌の感触がね・・・・・

 わたしの背骨の芯の辛さを、乳酸と一緒に散らして消していってくれるみたい。

 ああ・・・・・・・
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