第239話 やすみの日はやすまるかな?

文字数 1,299文字

 ゲンムはシャムのために取得していた看護ボランティア休暇から復学したし わたしは幼稚園年長のヤモリ組に通ってるし カンテンさんもチョウノちゃんもそれぞれの日常を懸命に生きてる

 だからやすみがひつようだ

「ゲンムゲンム あそびに行こうよ『いやだ ゆっくり休みたい』えー 休日を完全にカラダ動かさずに休息すると休み明けに筋力が落ちて学校とか仕事とか行った時に却ってだるくなるらしいよ?『園児っぽくないこと言うなよ』だってー お年寄りだってお年寄りぽくないこと平気でしでかしてるんだから園児が園児らしくするなんてむずかしいよー『理屈だな しかも屁理屈だ』ちがうよー『?』‘きべん’ ていうんだって」

 ほとんど強制的にゲンムを外に連れ出してとりあえずゲンムの家の近所の公園まで来たよ

 それがねえ きれいな公園なんだよね

「あ!ゲンム! カモ・カモ!『カタカナで言うなよ 騙す相手が見つかったそのカモみたいだろ』ゲンムこそへりくつ『摂理だよ』」

 池に映った向こう岸の木の姿のところに波紋をつけながら泳いでるカモがわたしたちが近寄ると水かきのある足をぺたぺたと動かして岸から離れて行っちゃうのがちょっと悲しいけどそれ以外はおおむねいい感じ

「カモ 欲しいな『食用か?』ちがうよ! ペットにしたらかわいいと思わない?『ペット?』」

 あれ

 ゲンムの反応がいつもとほんの少し違う

「『ペットならウサギに限る』えー 猫とかじゃないの?『いいやウサギだ』どうして? 『ウサギは利口だし行儀がいいからだ』猫だって教えれば行儀いいと思うよ?『ウサギがいい ウサギ前提で話題を振ってくれ」

 なにかウサギに助けられることでもあったのかな?

 だから公園を出たら里山に行ってみたんだよね

「『山へ来たところでそうそう簡単に野生のウサギは観られないだろう』わかんないよ?ひょっとしたらゲンムみたいにウサギ愛好家のひとがウサギ笛を持ってるかもしれない『ウサギ笛ってなんだ』多分 吹くと半径3km以内のウサギが寄ってくる笛『そんなオカルトみたいな笛 観たことも聴いたこともないぞ』いいよいいよゲンムが知らなくても実際あったら重宝するだろうし『そうか?』」

 ゲンム 失礼だよね

 でもわたしも犬笛を知ってたからウサギ笛もあるんじゃないかって言ってみただけで ウサギ笛を観たことも聴いたこともない

 それに里山の中でいきなり ガササ って音がしたらツキノワグマが現れたのではないかと疑ってかからないといけない

 そうして ガササ って音がした

「ゲ、ゲンム!『うろたえるな 大丈夫だから』なんで大丈夫だってわかるの?『あれは貂だ』」

 ん?

 テン?

「『テンだ』」

 わたしは休日のトレーニングのつもりで即座に言語に使う筋肉を動かしてクイズを出した

「ゲンム 貂の数え方って知ってる?『はあ?』いい いくよ 一テン 二テン 三テン 四テン 五テン 六テン 七テン 八テン 九テン…さあ 10匹目は!?」

 わたしはゲンムの手話を読み取ってココロの中でだけ同時通訳した

‘テン・テン’

「なんでわかったの!?」

 わたしの驚きの声にゲンムが手話で返してきたよ

‘舐めてるのか’

 
 
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